僕達の薄荷懐かしの味

□ヰ3
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退side


兄は長い腕を伸ばし、
小さい俺の為に体を折り曲げ俺を抱きしめた。


戻「元気してたかえ?
  まぁ、こがに痩せおってぇ!
  ちゃんとご飯食べとるんか?
  ちゃんと寝とるんか?
  お友達は?苛められとらんか?
  それから……」

思い出した。兄は喋りだすと止まらない
マシンガントーカーなのだ。

退「兄さん、ちょっと待って‼」

俺の体を掴む兄の手を引き剥がし、
兄を制止させた。

退「俺は、大丈夫だから。
  それより兄さん。
  生きてたんなら連絡位頂戴?」

ゆっくり噛んで含ませるように聞くと
兄はやっと落ち着いたように話し出した。

戻「あぁ、済まんのぅ。
  今まで退ちゃんの居場所知らんかって。」

にこりと兄は笑った。
俺は浮かんだ疑問を問いてみることにした。

退「それじゃ、何で俺の居場所が判ったの?」

戻「晋ちゃんが知っとったんよ。」

退「晋ちゃん?」

戻「攘夷戦争の仲間や。」

全「攘夷戦争!?」

ってアレ、全って……

退「ちょっと皆さん‼」

皆、障子の隙間から見てたよ‼
恥ずかしッ‼

沖「よぉ、退ちゃん。」

うわぁ、沖田隊長笑みが黒いよ…。

それより攘夷戦争って……

土「ちょっと聞かせて戴こうか。
  山崎の兄さん。」

兄はキョトンと副長を見つめていた。
すると、おもむろに兄は口を開いた。

戻「トシちゃん、やったっけか。
  アンタ、少し糖分摂ったがええで?
  ほら、飴ちゃんあげたる。」

全−土・退「トシちゃんwwww‼」

戻「ほら、アンタ達もおいでぇ。
  いるやろ?飴ちゃん。」

あぁ、この屯所内にいる人全員
兄の許容範囲だからな。

チラリと兄を見やると兄の周には
まるで子供のような顔をした隊士達が群がっていた。
あの副長まで少し顔を赤らめ嬉しそうな顔をしている。

アレがカリスマ性ってもんかな。

兄の飴を渡す手はゴツゴツしていて、
刀を持つ者の手だった。
先程俺を抱きしめたか腕は傷だらけで
戦を生き抜いた者の腕だった。

兄には一生及ばないなと僕は思いました。         山崎 退
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