約束 (長編)

□傾慕
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再び重ねられた口唇は、迷わず舌を咥内へ導いた。名無しさんの舌を絡めとり強く吸いつき、零れ落ちそうな蜜を余すことなく吸う。初めて男から与えられる快楽に名無しさんはなすすべなく、必死にリヴァイの肩にしがみついていた。
リヴァイは、だんだんと息が上がってきた名無しさんの薄紅色に上気した鎖骨越しに見える肌や赤く染まっていく頬に否が応でも自身が昂ぶっていく。
「…は…ぁ…」
堪えきれずに名無しさんが唇を僅かに離した時にまた甘い吐息が漏れた。
「…まだだ…まだ足りねえ」
リヴァイが三度名無しさんの唇を塞ごうとしたその時ー

「リーヴァイー!名無しさんが医務室にいないみたいなんだけ…ど?!」
「「!!」」

ノックを完全に忘れてリヴァイの部屋をガチャリと開けたハンジに2人は固まった…。

「ひー!!痛い痛い痛い!!
だからわざとじゃないんだってばー!!」
「クソ眼鏡…今すぐその肉削ぎ落としていいな…?」
「怖い怖い怖い!目がマジだから!!」
「俺は常に真剣だ」

ドアを開けること数秒…ハンジが目の前で抱き合う2人に固まっていた僅かの間に事態を把握したリヴァイは瞬殺の勢いでハンジを蹴りだすと、ドス黒い殺気を孕んだまま先ほどの質疑応答を繰り広げていた。

ーどうしよう?!絶対!絶対見られた!
部屋の中では、顔から湯気が出るほど真っ赤に染まった名無しさんが廊下に響き渡るハンジの悲鳴も耳に入らず1人狼狽えていた。
ー今廊下に出るのは気まずい…
でも、リヴァイさんが部屋に戻ってきた時どんな顔してればいいかわかんないし…!
ーしかもさっきの続きを求められたら…!
名無しさんの脳内をいろいろな妄想が駆け巡り…
ーとにかく自分の部屋に戻ろう…
自分を落ち着かせるためにも部屋に戻ることにした名無しさんは、ベッドから立ち上がった。

「廊下で何をしてるんだ?2人とも」
ハンジの絶体絶命のピンチに救世主のごとくエルヴィンが通りがかる。
「聞いて?!エルヴィン!リヴァイがね、名無しさんと…ぐぇっ!」
皆まで言わせずハンジを踏んづけてからリヴァイが言った。
「空気の読めねえクソ眼鏡を躾けてるだけだ」
「…リヴァイ。そろそろ退いてやれ」
チッと舌打ちをしながら渋々リヴァイは退いた。
「2人ともちょっと団長室に来てもらえないか?今度の壁外遠征の件で話があるんだが」
「今からか?」
「何か不都合でもあるのか?リヴァイ?」
「…ねえよ」
名無しさんのことが脳裏を掠めたが、今はエルヴィン達との打ち合わせが最優先される。
ーそれに…エルヴィンは恐らく今回の遠征から名無しさんを連れて行く気だ…
少しでも自分の近くに名無しさんを配置させなければ…
ー名無しさんを無事に壁の中へ帰還させるために…。

団長室のドアを開け、2人の入室を促しているエルヴィンの思惑を推し量りながら、リヴァイは後ろ手でドアを閉めた。
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