約束 (長編)

□訓練
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「巨人は人間以外捕食しないんですか?」
翌日、朝からハンジの研究室で巨人についての本格的な知識を勉強することになった名無しさんは、先程ハンジから巨人が人間以外の生き物は襲わないことを聞き、少なからず衝撃を受けていた。
「そうなんだよね。巨人が食べるのは人間だけ。しかも、ほとんど未消化で吐き出すから、彼らの目的は我々の殺戮のようなものなんだ」
「…そんな…」
「ただ…通常の巨人は知能も低くて、近くにいる人間を捕食する行動しかとらないんだけど、奇行種って言うのが厄介でね」
「奇行種?」
「そう。奇行種は、本来の習性から外れた予測不能の行動をとる巨人のことなんだよ。この種の巨人は近くにいる人間じゃなくて、遠くにいるより多くの人間の集団を襲う傾向があるんだ」
「えっ?それじゃ…」
「そう。長距離索敵陣形による戦闘回避が通じないから壁外においては非常に危険な存在なんだよ」
「できれば会いたくないですね」
「まぁ…遭遇した場合はすぐに立体機動で戦闘態勢に入って、まず討伐補佐が足を攻撃して動きを封じてから、巨人の…あ!これは通常種にも当てはまるから覚えといて!巨人の後頭部より下のうなじにかけての縦1m幅10cmを両手に持った剣、ブレードって言うんだけど、これで削ぐんだよ」
ここ、この辺り…と、ハンジはわかりやすく図で説明する。
「巨人の大きさに関係なく、彼らの弱点はここなんだ」
「そうなんですね」
「他の部位を攻撃してもだめなんだよね。彼らは驚異的な生命力と再生力を持ってるからさ」
「えっ?再生力?」
「そう。手を落としてもすぐ生えてくるし、目を傷つけた時もあっという間に元どおりだったね」
「…それは…体が傷ついてもすぐに治るってことですか…?」
「そう!それに体が大砲で半分くらい吹っ飛んでも動けるんだよ!これを踏まえて現在までの私の巨人に対する考察がねー」
そこからのハンジの話は名無しさんの頭にあまり入ってこなかった。
ー巨人は驚異的な再生力を持っている。
ー体が傷ついても早く治る…ナナバさんに言われた私の右手の切り傷…もしかして…?
「あれっ?名無しさん、ちょっと休憩する?顔色悪いよ」
覚えることは山ほどあるしね! 名無しさんはハンジの声もあまり耳に入らなかった。先程聞いた巨人の再生能力のことが妙に彼女の心に引っかかり、同時に不安の影を落としていた。
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