約束 (長編)

□傾慕
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ー女の体なら飽きるほど抱いてきた。
だが…まわりが見えなくなるほど惚れた女はいなかったー

「…う…ん…」
「気がついたか」
「……リ…ヴァイ…さ…?」
ーたしか私…ナナバさんと…
気を失った名無しさんをリヴァイは医務室ではなく、自室のベッドに横たえていた。
目を覚ました名無しさんはベッドに寝ている自分の側に座っているリヴァイを見上げ、ゆっくりと起き上がった。
「気分はどうだ?」
「大丈夫です…
なんだかすいません。途中で気を失うなんて…」
「無理もない。剣を交わすの久しぶりだったんだろ?」
「あの…ナナバさんにも申し訳ないことを…」
「そんなことはねえ。結構いい勝負だった」
「そう言って貰えると…
でも私きっと重かったでしょうし」
「いや?むしろ軽かったぞ」
「え?…あの…もしかして、落ちた私を運んだのって…」
「俺だ」
ーリヴァイさんが?!
瞬時に顔に熱が集まってきた。
「どうした? 熱でも出たか?」
名無しさんの気を知ってか知らずか、リヴァイは自身の額を名無しさんの額に合わせてきた。
ー!顔が近いー!
「だ…大丈夫です…!」
咄嗟に離れようとして、彼の肩を押そうとした時にはもう名無しさんの体はリヴァイの腕に包まれていた。
「名無しさん…」
「……んっ…」
今日は立会いの邪魔にならないように長い黒髪を頭上で結っている。そのおかげで無防備になった耳にリヴァイの声と吐く息を直接感じ、名無しさんの肩はピクっと跳ねた。
「名無しさんよ…」
名無しさんの反応が起爆剤になったのか、リヴァイは彼女の耳に甘く囁くと耳朶を舌と唇で愛撫し始めた。
「んっ…あっ…」
堪えきれず零れる名無しさんの吐息がリヴァイに届く。脳内が甘く痺れていく感覚に酔いながら名無しさんの後頭部に手を回し、キスをするとそのまま舌を彼女の咥内に差し込んでいった。
歯列をなぞり、開けさせて舌を絡ませていく。名無しさんの肩が再び大きく跳ねてリヴァイから離れようとしたが、彼がそれを許すはずなく彼女を抱く腕に力が込められた。
ー初めて…か…?
名無しさんの美貌なら元いた場所でも言い寄ってくる男はいたはずだし、恋人がいてもおかしくはない。だが、この前の時もそうだが、反応が男慣れしていないなという気がしていた。
ーもしそうなら…俺がお前を…
リヴァイの舌の動きに小さく体を震わせながら必死に自分の舌を絡ませていく名無しさんにだんだん自身の雄が熱を帯びていく。
結っていた髪を解き、絹のような滑らかな感触を優しく指で梳きながらリヴァイは唇を離した。
「は…ぁ…」
瞳を潤ませ慣れない行為に肩で息をする名無しさんを見ると愛しさと欲望が同時に込み上げて来た。
「名無しさん…もう一度…」
熱のこもった目で名無しさんを見つめながら先ほどのキスの余韻が残る彼女の口唇をリヴァイの骨ばった指がなぞる。
「は…い…」
リヴァイに触れられたところ全てが発光しそうなほどに熱を帯びていく。
それが彼から与えられる快楽だとはまだ気づけない名無しさんだが、その甘美な感触をもう一度甘受したくて再び目を閉じた。
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