約束 (長編)

□想起
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「新撰組だ!大人しくしろ!」
「くそっ!幕府の犬が!」

凄まじい殺気とともに闇夜に剣戟の音が響き渡る。

「不逞浪士を1人残らず捕縛しろ!」
「刃向かうものは斬れ!」

襖を蹴破り、抜刀して斬りかかって来る浪士達を名無しさんは軽々と避けると、抜き身の刀身で鮮やかに討ち取っていった。

「相変わらず仕事が早いね〜名無しさんちゃんは」
「沖田さんこそ…
いつ拝見しても素晴らしい三段突きです」
「…ねえ。そろそろその他人行儀な言葉遣いやめたら?」
「いえ、私は入隊して間もないですし、沖田さんは一番組組長でらっしゃいますし」
「ははっ。まあね。でも2人の時はもっと砕けた喋り方でいいんだよ?」

深夜の捕物が終わり、沖田と名無しさんは捕縛した浪士達を屯所へ移送していた。

「そういえば、君は剣の腕をどこで習ったの?」
「里の師匠に教えてもらいました」
「鬼の里の?」
「はい。千姫様をお守りするためです」
「ふーん…にしても、すごい速い居合だったよね。一くんといい勝負だよ。僕も太刀打ちできるかどうか」
「ふふふ。沖田さんに褒めて貰えて光栄です」
「今日のご褒美に近いうちに甘味屋でお団子でもどう?」
「嬉しいです!ありがとうございます!」

そんなことを話しながら名無しさんは沖田と並んで歩いていた。







「…名無しさん!
名無しさん!」

「あ…れ…? ハンジさん?
!私ったら寝坊?!」

ハンジの声で目が覚めた名無しさんは、寝坊してしまったのかと驚き飛び起きた。

「いきなり朝早くごめんね。今日ってさ、1時間くらい空けられる?」
「今日でしたら…昼食の後片付けが終われば大丈夫ですけど…」
「じゃ!決まり!
後片付け終わったら私の部屋に来て!場所はわかるよね?」

そう言いながらハンジは詳しいことはその時に!といって風のように名無しさんの部屋から出ていってしまった。

1人残された名無しさんは先程まで見た夢のことを考えていた。

…なんだか…戦っていたような…?

剣を扱っていたのではないかとエルヴィンに問われたからではないとは思うが、妙に生々しい夢だった気がする。

あの…人を直接斬った感触…

まだ手に残っているみたい…

自分の手のひらをジッと見つめ、夢の中に出てきた人物との会話も思い出す。

(君は剣をどこで習ったの?)
(……の里です)

あの時、私は何て答えたんだっけ?

ーそれに並んで話してた長身の男の人は…何て名前だったっけ?


肝心のところが靄がかってまるで思い出せなかった。
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