約束 (長編)

□目覚め
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……ここは?…


まだ完全に覚醒しない頭で周りを見回した名無しさんは、見覚えのない室内に愕然とした。

…ここは…いったい…?


石の壁に囲まれたその部屋は、塵一つなく清潔な部屋のようだが、名無しさんの知らない場所だった。


「気付いたようだな」

ふいに間近で声が聞こえて、びっくりする。

思わず起き上がった刹那…声の主と目が合った。


低い声に似合わず小柄な男の姿が、ランプの灯りに浮かび上がる。
その目つきの鋭さに圧倒されたが、不思議と恐怖はなかった。


「…あ、あの…」

「…なんだ?」


「…ここは?…」

「…調査兵団の宿舎だ」

……調査兵団?……

聞いたことのない名前に困惑して、黙っていると

「知らねえのか?」

声の主が聞き返してきた。

「はい…」

「名は?」

「…名無しさんです…」

「それだけか?」

「え…?」

「普通その下にファミリーネームがあるだろ?」

「……」

黙り込む名無しさんを見て、ハッとなった男は続いて聞いてきた。

「…わからねえのか?」

頷くと、チッと舌打ちが聞こえた。

…どうしよう?
戸惑いながらも名無しさんがその人を見ていると

「お前…東洋人か?」

「…東洋人?」

その時、トントンとドアをノックする音がして

「リヴァイ、ちょっといい?」

ハンジが顔を出した。
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