小説
□オン二の攻略法
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「オンニ、ちょっと相談があるんだけど」
そう言ってオンニを部屋に呼んだ。
何も知らないオンニは何の疑いもなく部屋に入る。
入ったのを確認してこっそり鍵を閉めた。
他愛のないを二人でする。
「それで、話って何だったの?」
暫くしてからオンニが私に聞いてきた。
「あのさ、オンニって好きな人いる?」
「何笑、そんな話がしたかったの?」
笑って言われる。
「いいから答えてよ」
「いないって」
当たり前のように否定される。
嘘だ。ほんとにいないんだったらそんな目で私のこと見ないでしょ。
口ではそう言いながらもオンニの目は何かを期待するように私を見ていた。
気づいて欲しいと、私を求める目。
「いるでしょ」
「何でそんなこと思うの?いないよ」
本当にそう思い込んでいるのだ。
責任感を拗らせたオンニは自分の気持ちに気づいていない。なのに無自覚に私を求めるからまったくタチが悪い。
困ったオンニ。
「いるよ」
「もう。誰なのそれ」
「わからない?」
顔を近づける。
オンニが息を飲むのが分かった。目を軽くそらされる。
「まだわからない?」
「チェヨンなんかしつこい。さっきから何言ってるの?わからないって」
少し苛立ったようにオンニが言う。
「それほんと?」
「ほんとだって」
さらに顔を近づける。耳元で囁く。
「ね、オンニ。私のこと好きでしょ?」
「……馬鹿言ってないで離れて」
手で押されて後ろに戻る。相変わらず目をそらしたままのオンニ。
その手を取ってオンニの胸にあてる。
「心臓ドクドクいってる。こっちまで伝わる」
「……っ」
手を振りほどかれる。
「私の目見れる?」
「しつこい」
「どうして見れないと思う?」
「うるさい」
「好きなんでしょ?」
「チェヨン黙って!!」
オンニが勢い良く立ち上がった。顔は伏せられてよく見えない。
「ふざけないで……」
そうつぶやくオンニの声は震えていた。
確かに少し焦りすぎたかもしれない。いきなりあんなことを言われても、気持ちの整理ができないのは当然だ。
「…っごめん、大きな声出して。ちょっと頭冷やしてくる」
顔を上げて私を見るオンニ。無理やり笑顔をつくっているのが分かる。目が少し赤くなっていた。
強がらないでよ、オンニ。
私はオンニが好きなの。
「まって!」
肩を掴んで引き留める。力ずくで振り向かせると、オンニは泣いていた。
「オンニ何で自分が泣いてるかわかる?」
「わかんないよ。でも、苦しい」
「苦しいのも全部私のこと好きだからなんだよ」
諭すようにゆっくりと言葉を紡ぐ。
返事をせずに、首を振るオンニ。
そんなオンニの顎を掴んで、キスをした。
「……っ!!んんっ」
身体を突き飛ばされる。
オンニは目を見開いて私を見ていた。
「チェヨン……?どうして…」
「私もオンニのことが好きだから」
再び強引に唇を奪う。
「やっ…!!」
オンニが部屋から逃げ出そうとする。
が、鍵が閉められていて開かない。
ガチャガチャとドアを必死に開けようとするオンニを追い詰めた。
「無駄だよ、さっき閉めといたの」
ドアにオンニを押さえつける。
「私はオンニのこと好きだよ?オンニも私のこと好きなんでしょ?」
「ちがうっ…!!…っん」
素直じゃない口を塞ぐ。
「…っは、いやっ…んっ」
塞ぐ。
「やだっ…!!んんっ」
塞ぐ。
「私のこと好きなんでしょ?」
「ちがっ…んっ」
塞ぐ。
「好きなんでしょ?」
「いやだって…!んんっ」
塞ぐ。
「ほら、好きって言って」
「……っ、んっんん」
塞ぐ。
オンニの目がとろんとしてきた。だんだん抵抗する力が弱くなる。
もう一押しだ。
今までで一番深く深くキスをする。惚けたように私を見つめるオンニに言う。
「私のこと好きでしょ?」
「……うん」
確かに私の耳に聞こえた肯定の声。嬉しさで舞い上がる心を必死に抑えてもう一度聞く。
「オンニは私のことが好きなのね?」
「…うん、好き。私チェヨンが好き…」
小さな声の告白。
私の恋は叶ったんだ。
「良かった…」
オン二に抱きつく。強気でいたけど、こんな強引なことをして嫌われたらどうしようと不安だったのだ。
堰を切ったようにオンニの瞳に涙が溢れた。苦しいくらいに抱きしめ返してくれるオンニが愛おしい。ちっちゃな子供みたいに泣き崩れるオンニの背中をを優しく撫でる。
「オンニ、これからよろしくね」
こうしてジヒョオンニと私はめでたく付き合うことになったのだった。