小説

□遅れたヒーロー
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ナヨンさんとキスしているところを写真に撮られて女の先輩に脅されるジヒョ。いつもは気をつけてるけどそのときは大ゲンカの後の仲直りに浮かれて人通りの少ない廊下で自分からキスをしてしまった。人影がいないのを確認していたつもりだったのにまさか撮られていたなんて、と自分の不注意さを悔やむ。自分が蒔いた種だから自分でどうにかしなきゃいけないと1人でその先輩の部屋に出向くジヒョ。その先輩は女好きのレズで有名だった。「前から目つけてたの。小さいのにいい体してるわよね?あの写真のことは黙っておくから、抱かせて?まさかあなたもレズだとは思ってなかったけど、こっちとしてはラッキーだったわね。」とか言って写真を目の前でヒラヒラ振りながらニヤニヤしてジヒョの方を見る。それを聞いてああ、この人は私の体しか見てないんだな、とジヒョは思う。生意気だし、がさつだし、強がりだし、上手く甘えられないし、かわいくともなんともない自分の性格を知ってるのにそういっていじける自分を「あんたはかわいいよ。」と言って頭を撫でてくれるナヨンを思い出す。私は同性が好きだから好きなんじゃなく、ナヨンだから好きなの。こんな薄っぺらい奴怖くもなんともない、隙をみて一矢報いるつもりで脅しにのる。
組み敷かれてもずっと「ナヨンの方が全然上手。」「こんな真似してまで私の体が欲しかったの?」「今まで付き合ってるって噂になってた子もこんなふうに脅したの?皆あなたが嫌いだったでしょ?」「あなたみたいな奴に抱かれるなんて皆最悪だったでしょうね。」とか強気な言葉をジヒョはぶつける。キレた女はジヒョをベッドに縛り付けて声が出ないようタオルで口を塞ぐ。抵抗出来ないジヒョにローターでひたすら弱いところ攻める。ナヨンはそういう道具は使わないので、ローターを知らなかったジヒョはこれまで経験したことがなかった止まることのない強すぎる刺激に恐怖でパニックになる。強気だったジヒョが自分に好きなようにされて、よがっているのを見て気が治まった女はジヒョに「やめて欲しかったら気持ちいい、ナヨンよりオンニの方がいい、って言って。」と言う。絶対に言いたくない、飽きるまで耐えればいいんだと考えるジヒョ。しばらくしたら飽きるだろうというジヒョの予想に反し一瞬の休みもなく何時間も攻められ続ける。とっくに限界を超えているのに達して敏感になっている体に容赦無く次の絶頂を与える。もういやだ、助けて、と泣いて許しをこうジヒョに「言っちゃえば楽になるのに。」と囁く。苦しくて苦しくてもうどうしようもなくなってしまったジヒョは苦痛から逃れたい一心でついに口をひらいた。と、そのとき部屋のドアが勢いよく開いた。ナヨンだった。「⁈鍵は閉めてたはず!どうやって!」「あんたに恨みをもってる子が快く合鍵を貸してくれたわ。潰しに行くって言ったらね。」「、、、、、‼」「ジヒョを離して。」冷静な態度に静かに怒りを滲ませながらナヨンは言う。「いいの?あなたたちの写真ばら撒いても。もうスマホにもタブレットにも保存してあるわよ?」勝ち誇った顔で言う女。そんな彼女を一瞥してナヨンは真っ直ぐ部屋の中に歩いていく。目的が見えず混乱する女。ナヨンが机の横に置いてあるバックを手にとった。女のものだった。やっとナヨンがしようとしていることに気づいた女は必死に止めようとする。自分の元へ走ってくる女を横目にナヨンはバックから女のスマホとタブレットを取り出すと机に置き、近くにあるペーパーナイフを掴むと、力任せにそれに、、、突き立てた。
割れる画面。女は力なく床にへたりこんだ。ナヨンは原型がなくなるほどそれらをこなごなに砕いた。窓を開けてその欠片を投げる。月の光が反射してキラキラと光りながら地面へと落ちていった。呆然としている女の元に歩いていき手から証拠の写真をひったくった。もう脅しはきかない。「あんたの歴代の彼女たちを訪ねた。皆脅されていたことを教えてくれた。同じ様に脅されていた子がいることを知ってみんなで訴えようって話も出てる。もう、終わりだよ。」ナヨンの言葉を聞いた女「ありえない、ありえない、、」と呟きながら顏を蒼白にしてふらふらと部屋から出て行った。ナヨンはジヒョが縛り付けてられているベッドにいき拘束を解いた。手首の赤い抵抗の後が痛々しい。ジヒョは何か言おうとするが声にならない。ナヨンはジヒョを優しく抱きしめた。「遅れてごめん。」ナヨンが言うとジヒョは「違う、、、違くて私が、、」と頭をぶんぶんと振るがやはり上手く言葉が出てこない。「大丈夫。分かってるから。」と頭を優しく撫でた。頭にいつもの柔らかな手のひらを感じ、一気に緊張が解けたジヒョは泣き笑いのような顔で「ありがと。」と小さく言ったかと思うと積もり積もった疲労から気を失うように腕のなかで眠りに落ちた。動かなくなったジヒョをおんぶして部屋に戻るナヨン。背中に恋人の確かな温もりを感じる。そのことに安堵する。部屋に着いてジヒョをベッドに寝かすと自分もすぐソファで眠りに落ちた。
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