小説

□策略
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やっと手に入れた。ナヨンは宅急便で届いたそれを見ながらにやりと笑った。袋から取り出した香水の様な容器に入った紫の透明な液体。さっきまで飲んでいたポカリの缶に数滴垂らす。軽く混ぜてからジヒョを呼ぶ。
「ジヒョ〜ジ〜ヒョ〜」
「何?オンニ?」
少し離れたところでスマホを見ていたジヒョが歩いてくる。
「これ以上飲めなくなっちゃったからこれ飲んで〜」
ポカリのの缶を目の前で振って見せる。後残りニ、三口程度だ。
「まったく、飲める量考えなきゃ駄目だよ。ん、頂戴」
「ごめんなさい〜ナヨン姉さんの愛入れとくから許して?」
そう言って缶にキスしてジヒョに渡す。
「愛は要らないって笑」
ジヒョが笑いながら残りを一気に飲んだ。よし、ミッション完了。


私が手に入れたのは所謂媚薬と呼ばれるものだ。安っぽいものではなく本当に効くと評判のもので三ヶ月も待たされたのだ。容器だってオシャレで化粧品と混ぜておいても全然違和感がない。私とジヒョは付き合ってもう三年ぐらいになる。それなりにそういうこともしてきた。私は行為中ジヒョを虐めに虐める。意識が朦朧としてくるとジヒョはいつもより素直になる。何度も何度も好きと甘い声で伝えてくれるのだ。強がりで、恥ずかしがり屋のジヒョは責められ続け何も考えられないぐらいの状態になって始めて気持ちを声に出せるようになる。好きと言われて、私も、って応えるその時間が好きだ。もちろん現状には大いに満足している。行為中のジヒョの可愛さはいつもとのギャップもあってもう犯罪級だ。この姿を知っているのは自分だけだという優越感と誰にも見せたくないという独占欲。可愛くて可愛くてたまらない。ただ、今回このような作戦を立てたのはもっとジヒョに素直になって欲しかったからだ。ひょっとしたら今までのリミットを越えた更に可愛い姿が見れるかもしれない。夜まで待機だ。部屋、来てくれるかな?12時をまわったら私から訪ねてみよう。



12時10分前。やっぱり来ないか。今までもジヒョから誘われたことは一度もない。恥ずかしいからなのだろうがジヒョがどんな誘い方をするのか見たかったな、と思ってベットから立ち上がろうとすると遠慮がちなノックの音がした。

急いでドアを開けるとジヒョが涙目になりながらこっちを見ていた。心なしか顔も赤いし息も荒い。効果はちゃんと出ているようだ。素知らぬ顔でどうしたの?と聞くといきなり抱きつかれた。耳元にあたる息が熱い。小さくこく、と唾をのむ音がした。そして、
「ね、、えっち、、したい、、、」
そう囁かれた。

やられた。これは反則だ。

「いいよ。」
応えてすぐにジヒョの唇に吸い付いた。少し開いた歯の隙間に舌をねじ込む。始めてのディープキスに驚いたようだがしばらくするともよおされるように舌を絡めた。やはりいつもより反応が素直だ。お互いの唾液で糸をひいた唇を離すとジヒョは既にスイッチがはいったのかとろんとした目をしている。手を引いてベットまで連れて行き優しく押し倒した。パジャマのボタンをゆっくり外す。服がこすれるのにも感じるのか目をぎゅっと瞑って震えている。見えてきた白いお腹を撫であげながら下着を外した。突然外気に晒された胸は少し冷えた自分の指先に敏感に反応した。柔らかいそれをやわやわと揉みながら先を舌で刺激する。ジヒョは耐え切れなくなったのか短い喘ぎ声がでている。

薄暗い部屋の中で耳に響くのは喘ぐジヒョのはちみつボイス。いつもより一段と甘くなったその声は私の耳を犯していく。長い胸への刺激でジヒョの背中が上がってきた。反った背中というのはなんとも官能的だ。女性ならではのしなやかさを感じる。荒い息で上下するジヒョの胸にキスを落とす。今の状態のジヒョなら肩やお腹にキスマークを残してもばれないだろうがなんとか理性を保って我慢する。もうジヒョは私のものなのだと他人にちゃんと見せつけておきたいのはやまやまだが、私たちはアイドルグループだ。私がどんなにジヒョを虐めるセックスをしようがジヒョは許してくれる。それは私がそういう一線をきちんと守っているからだ。いつもならキスマークをつけたい欲を抑えておけるのに今回はジヒョが悪い。上擦った声でしきりにキスをねだっては快感で時々強張る舌で私のキスに必死に応える。上手いとはとても言えない稚拙な舌遣い、だけど恥ずかしがり屋のジヒョが自分から舌を絡めて快感を求めているのだと考えるだけで身体中が興奮してくるのを感じる。首筋を真っ赤に染めて涙目になっているジヒョを見てもう大丈夫だと判断した。薄くあいた唇をひと舐めしてからズボンを軽く下ろして下着の上から敏感なそこを触った。もう少し湿り気を感じる。柔らかなその核を指で軽く刺激する。
「あっっ、、んんっ、、、っ」
それだけでジヒョが軽く達してしまった。いつもより数段感度がいい。
「なよっ、、んっ、、、ちょっと、まって、、わたしの、からだ、、変なの、、」
刺激を与え続ける私の手を力の入らないで止めようとする。
「どういうふうに?」
「熱くて熱くて、、もう自分の体がどうなってるのかわからない、、、怖いよ、、、おんにっ、、、」
「大丈夫よ、熱いってどこが?」
「っ、、、し、したのとこ、、」
「感じてたらみんなそうなるじゃない」
止めていた刺激を再開する。
「ちがっ違う!こんなの、、、おかし、、、あっあっあぁっ‼」
「違うってなにが?」
感じすぎる自分の体に頭がついていかないのか目に戸惑いが溢れている。
「お願いっ、、、まってっ、、、
や、やだ、いや、、、っあっ」
また達した。ジヒョは余韻でまだピクピクと痙攣している。零れた涙を舌で掬い取る。
「待つわけないでしょ?」
そう呟いて下着の中に手を入れた。確かに熱い。ぬるぬると潤ったそこに細やかな刺激を降らす。
「ほんとにっもう、、、」
苦しそうな顔で首を振るジヒョ。少し過呼吸気味になっている。やり過ぎたと少しだけ反省して方針を変える。触るか触らないかのところで弱い刺激。そんな小さな刺激にも体全身を使って感じるジヒョが愛おしい。達するギリギリのラインで何度も止める。意識が朦朧としてきたジヒョは力の抜けた体でただただ快感を受け取ることしかできない。
「ね、、頭がぼーっとする、、、」
「そう?ジヒョ、気持ちいい?」
「ん、なよんおんに、、、好き」
私の大好きなあの笑顔でゆるりと笑って言った。
「私も。」

十分に湿ったそこに指を差し込んだ。最初は一本でもきつくて、苦しそうにしていたが最近やっとその一本は入るようになってきた。ジヒョの沢山の初めてを私は貰った。私もそんなジヒョの気持ちに応えたい。感じる場所を探しながら指を進める。自分の指一本で声が出なくなる程感じて悶えている。こんな指一本
で1人の女の子がこんなにも乱れるなんて人の体って不思議だな、と改めて思った。ジヒョがこんなふうに身を預けてくれることが嬉しい。ひたすらに自分だけを感じてくれることが嬉しい。一番反応する場所を探し当てそこを集中的に攻める。
「なよんっ好きっ、、大好きっ、、、っ、、あぁっ‼」
うわ言のように好きだと繰り返していた声が一層高くなって、強く達した。反った背中から力が抜けてジヒョはベットに倒れこんだ。まだ荒い息を繰り返して余韻を感じている。
落ち着いたのを確認して近くに寄って頭を撫でた。くしゃくしゃになった髪を梳かすように優しく撫でる。
しばらく目を閉じてされるがままにしているジヒョ。赤みの残る頬っぺたを冷やすように手の甲で触れる。
流れる静かな時間。

「なよんおんに、ありがと。」
突然ジヒョが言った。何故かシーツを被ってから言っているので声がこもって聞こえにくい。
「なにが?」
「いきなり来てあんなこと言ったから、、、」
ああ、それは恥ずかしがっていたからか、と目の前の喋るシーツ見てやっと気づいた。
「おんにはいつもスケジュールとか体調とか気にしてくれるのに私、、、ごめんなさい。」
謝る声が余りににも落ち込んでいるので焦る。もうジヒョの方から誘ってくれないかもしれない!
「いや、ジヒョじゃなくて、それは私が薬を、、、あっ!」
やってしまった。これがうっかり口を滑らせる犯人の気持ちか。漫画で見るとき馬鹿だなぁと思っていつも見てたのに、、、‼
「おんに、それってどういう、、、」
ジヒョがシーツから顔を出した。
「いや別に危ないものを入れたわけじゃないわよ!ただちょっと素直になれる薬というか、、、」
「、、、!おんにまさかあの飲み物になにか入れて、、、あれ飲んでから体がおかしくなって、、、」
墓穴。
「危ないものだったらどうするの!
それってどんな薬なの‼」
もう言い逃れ出来ないと悟り近くに置いておいた化粧ポーチから瓶を取り出して渡す。
「いいやつなのよ。その界隈では評判の、、、」
「見たことない薬、、、。媚薬?」
脱いだ服からスマホを取り出して意味を調べているようだ。
「性的興奮を起こさせるって、、」
羞恥と怒りで顔を真っ赤にするジヒョ。あ、終わったな。


事後の甘い時間に代わって何時間もこっぴどく叱られた。次の「まのゴミ収集車に瓶は吸い込まれていった。
もう媚薬作戦は使えない。

でも、今回の作戦ひとつだけ大きな成果が出た。なんでこんなことをしたのかと聞かれたとき、ジヒョからは誘ってくれないから、と答えた。私がやったことは許されることではないが、ジヒョとしても何か思うことがあったのだろう。数ヶ月後ジヒョから誘ってきた。裾を引っ張ってベッドまで連れてこられた。気づいた私がにやにやしながら「ん?ジヒョ、なんかしたいの?」と聞くと恥ずかしさで声を震わせながら精一杯の誘い文句を言ってきた。みんなに教えるには勿体無いから教えてあげない。ただ私の計画は大成功に終わったとだけ言っておこう。今私の隣にはすやすやと寝息をたてる恋人がいる。愛しい子。
おやすみ、いい夢を。


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