小説
□かわいい彼女
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「…やりすぎ…。」
身体が落ち着いてきたジヒョちゃんは恨みがましく私を睨む。
「え、えへ?」
誤魔化そうと笑ってみるもののジヒョちゃんは睨むのをやめてくれない。
大変だ、これはお説教3時間コースの予感。
何度もやらかしてきた私はジヒョちゃんの怒る顔でどのくらいお説教が続くか何となくわかるようになった。
今回は重め。だけどこれくらいなら平気だ。なぜなら私は最長7時間コースを体験済みだからだ。このくらいどうってことない。あの時は怖かったなあ。音楽番組の終わったあと、他のグループの子と話しているジヒョちゃんに嫉妬してあろうことか廊下で襲ったのだ。人通りが少ないとはいえ、見つかる可能性もある。もちろんそんなヘマはしなかったが、ジヒョちゃんには長い説教と二ヶ月のお触り禁止をペナルティーとして与えられた。今となってはいい思い出だ。解禁後すぐに襲いに行くといつもより積極的で、焦らしもいいなと味をしめた。2番目に長いのは5時間。これはどうしても自慰プレイがしたくて所構わずやってやってと言っていたらまだ何もしていないのにお説教になった。ダヒョンとツウィの前で言ったのが駄目だったみたい。でもその後念願の自慰プレイは叶ったし、一人でやるときはイったことがないと告白してきたジヒョちゃんに手取り足取り教えるのもとても良かった。
つまり飴と鞭みたいなもの。
私がお説教に懲りてジヒョちゃんに手を出さなくなるなんてありえない。
やり過ぎたときのお説教は1〜3時間だから通常運転だ。
それより、ちょっと気になることがある。さっきのジヒョちゃんの反応。
あれってまさか…!!
「ジヒョちゃん、もしかして私が好きって言ったからあんなに中きゅーってなってイっちゃったの?」
「…っ…!!」
ジヒョはハッと顔を強張らせると真っ赤な顔で下を向いてしまった。
え、本当に!!
「ジヒョちゃんかわいい〜!!」
思わず抱きしめる。
勢いよく飛びついたからジヒョ力の入らない身体はぐらりと揺れて押し倒すような形になる。
「かわいい〜!!」
ぐりぐりと頬を押し付ける。
「本当にそうなの?サナが好きって言ったから?」
期待のこもった目で見つめると、少し拗ねた赤い顔。
「…そういうことにしてあげてもいいから、もっと言って。」
デレた!!ジヒョちゃんがデレた!!
興奮が収まらない。
デレた!!ジヒョちゃんが!!私に!!デレた!!
好きって言ってって!!
今すぐメンバーに言いふらしに行きたい。特に、サナばっかり好きって言ってない?っていつもからかってくるナヨンオンニに自慢したくてたまらない。
ドアを飛び出したくなる気持ちをぐっとこらえてジヒョちゃんを見る。
「顔ゆるゆる。」
ジヒョちゃんが私を見て笑い始めた。
言われて顔に手を当てると信じられないくらい口元が緩んでいた。
「…ほんとだ。」
「…ね。」
笑うジヒョちゃんはどこか嬉しそうで私も嬉しくなる。
「…そろそろ手どけて。明日デートでしょ?お風呂早く入らなきゃ。」
「あ、そっか。」
ここが脱衣所であることをすっかり忘れていた。私は夢中になると周りが見えなくなってしまう。
ジヒョちゃんから離れる。
「何そんな悲しそうな顔してるの。」
すっと消えてしまった体温がなんだか寂しくて情けない顔をしてたみたいだ。
「お風呂、一緒に入る?」
少し呆れたような、でも温かさに溢れた笑顔でジヒョちゃんが言う。
やっぱりお母さんみたい。
ついさっきまで自分が喘がせていた相手には思えない。
「うん!!」
元気に返事をする私にジヒョちゃんも満足気に微笑む。
お母さんみたい、子供みたい、そんなこと思うこともあるけどやっぱりジヒョちゃんは私の恋人でしかなくて。
いつも胸が痛くて苦しいくらいにに愛してる。嫉妬で1人傷付く気持ちもジヒョちゃんだけが癒してくれる。
守りたいとか、そばにいたいとか、そんな綺麗事だけじゃ済まされない気持ち。
手を伸ばせばすぐに触れられる距離が何よりも大切で、
声をかければ振り向いて笑ってくれる関係がかけがえのないもの。
ずっと隣で愛したいの。
私のかわいい彼女。
とりあえず言葉に出すのが苦手なジヒョちゃんに、好きって言わせるのが次の目標。
ちゃんと言葉にして伝えてほしい。
私だってジヒョちゃんのかわいい彼女。