小説

□遊び
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「っあ…ふっ、あぁっんん…っ!!」

私の指が中を掻き回す度に甘い声を漏らすジヒョ。

「ジヒョちゃん、気持ちいい?」

「んっ、気持ちいい…。」

とろんとした目で私を見て微笑む。
勘違いしそうになる。
だけど期待してはいけないことを私は何度も思い知らされた。


「ねぇ、もっとして…?」

私の頬をジヒョの掌が包む。

可愛い顔が近づいてきて口付けられる。

優しく触れられるだけのキス。

ジヒョはキスが苦手らしい。
煽るのは上手いくせに、いつも初めてみたいにキスは唇しか当てないし下手くそだし中は狭くてキツく締め付けてくる。
そのアンバランスさも好き、とか思ってしまう私はもうこの子から逃れることなんて出来ないのだろう。

指をより奥へと差し込んだ。

「んぁっ…!!」

背中が反ってジヒョの身体がビクンと跳ねた。

「またイっちゃいそうだね。」

とろとろと溢れ出す愛液は太ももを伝ってシーツに跡をつける。

「…っん、だって気持ちいっ…からぁ…。」

さっきそのぐちょぐちょなそこを舐めてあげたらすぐにジヒョは達してしまったのだ。

快感で濡れた瞳。

華奢な身体が何度もピクンピクンと跳ねて小さな絶頂がジヒョを襲う。

涙がいっぱいに溜まった目で喘ぐジヒョは本当に可愛くて、私の指を欲しがって離さない中も私が動きを止めるとすぐに焦れてねだってくる甘い声も全てが愛おしい。

…全部、私のものじゃないってわかってるのに。

ジヒョにとって私はただの繋ぎで遊び相手でしかないって分かってるのに。

分かってるのにジヒョに飽きられないように必死に奉仕する私はなんて憐れなんだろう。

こうやって触れれば触れるほど離れられなくなるって頭では理解していている。

こんな最低な人嫌いになってしまいたい。

受け入れられるのが分かって私を誘うジヒョを、軽蔑した目で拒んで見せれば少しくらい復讐できるかもしれない。

そういつも思うのに私は一度だって拒めたことなんてない。

きっとそんなことをしても私が期待するような反応は返ってこない、ただ私に興味が失せるだけでもう二度と誘ってこないのが関の山だろう。

結局私はジヒョのおもちゃでしかないのだ。

ただその肌に触れたくて、その声が聞きたくて。

ジヒョが好き。

好きで好きで堪らない。

気まぐれに落とすその一欠片にでさえも、馬鹿みたいに縋って拾い集めて私のものにしたい。

「さなぁ…イかせて…。」

また、そうやって私の名前を呼ぶから。

「…いいよ。ジヒョちゃん舌出して。」

ジヒョの小さな口が開いて舌を僅かに出す。

身体を赤く染めながら快感に緩んだ顔で舌を出すジヒョはおかしいくらいに綺麗で可愛いくて。

舌を絡めて深くキスをする。

息が上手く出来ないジヒョは苦しそうに喘ぐ。

そんなジヒョに興奮している私はもう壊れてしまったのかもしれない。

キスしている間指が止まっていたのが物足りなかったらしい。

「はやく…さないじわるしないで…。さなぁ…。」

ぽろぽろと泣き出すジヒョ。

私相手によく泣けるよね。

私のことを何とも思ってないくせに、こうやって恋人同士のように私に甘える。

ジヒョは全く悪気なく、私に対してそう振る舞う。

本当に根っからの最低。
悪いことをしてるなんて全く思ってないから、そんなふうに振る舞えるのだ。

焦らされて、いじわるされてるから泣く。

そこに私への罪悪感なんて存在しない。



「…ごめんね?今イかせてあげるから。」

指を激しく動かして弱いところを執拗に攻める。

「あっ…あぁっんっ…!!んんっ!!」

中がキツく締まってビクンと身体が痙攣する。

一回目。

達した身体に容赦なく指を突き立てる。

「さなっ…!!もうイったからやだぁ…。」

すぐにガクガクと震えだす。

「あっ!!んぁああ…っ!!」

二回目。

指を抜いて小さな敏感な突起をなぞる。

「やっ…だめっ!!もうやだってぇ…。」

こねるようにそこを弄る。

すぐに耐えられなくなってジヒョは身体を捩らせる。

「やっ…あっ…ふっぁ…んあっ!!」

三回目。

入り口がヒクヒクと震えてまた愛液が溢れた。

まだ痙攣を続ける身体がぐったりとベッドに沈む。

「これでおしまい。」

「サナ、今日激しい…。」

「良かった?」

「…うん。」

ジヒョが私の方に寄ってきて耳元で囁かれる。

「すごく気持ち良かったから、またやって?」

きゅっと抱きつかれる。
良かった…まだ私は飽きられてないみたいだ。

そのときジヒョの携帯が鳴った。

「オンニだ!!」

画面を見たジヒョは目を輝かせた。
ベッドに腰掛けると電話をし始める。

恋人と話すジヒョは照れたり、子供扱いされて拗ねたり、会えないことに苛立ったり、恋する乙女そのものだった。

いつもするすると私の指をすり抜けていく思い人は電話は越しの彼女のもの。

「…オンニ、好き…。」

ぽつりとジヒョが呟いた。

その声は恋人への思いと会えない切なさがいっぱい詰まっていて。

私の心を弄んで楽しんでいるジヒョの姿はそこにはなかった。

「…っ笑わないで聞いてよ、私今本気なんだから。」

赤くなっている顔を押さえながらジヒョは恋人への愛の言葉を紡ぐ。

二人の会話が嫌でも耳に入る。

物音を立てないようベッド上に座ったまま息を潜めている自分があまりにも滑稽だ。

何も届かないというのに何度もしかしたらと期待しただろう。

恋人と話すジヒョを見たら、敵わないことぐらい、最初から負けてることぐらい、分かったはずなのに。

虚しくて悔しくて、いつの間にか私は涙を流していた。


「…うん、オンニまたね。」

ジヒョは電話を終えると暫くその消えた画面を見つめていた。

私の目線に気づいてジヒョが顔を上げる。

「サナ?泣いてるの?」

私の顔を見てジヒョがクスクス笑った。

「どうしたの?何か嫌なことでもあった?」

自分が原因だってジヒョは分かってる。
分かっていて敢えて気づかない振りをする。
一番それが残酷なことと知りながら。

返事をしない私に困ったような顔をして手を引く。

「ほら、こっちおいで。」

頷いてジヒョの側に行く。

「一緒に寝よっか。」

背中を優しく撫でられる。
隣から伝わる体温と柔らかな香りに包まれながらまどろみに落ちていく。

深く深く、落ちていく。
















































































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