小説
□雨
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「さっきまで晴れてたのになんで土砂降りになるのよ‼︎」
「知らないって‼︎」
雨の中二人は急いで近くのコンビニに飛び込んだ。一息ついて店内から外を見る。空には黒雲が立ち込めていた。
今日はジヒョとデートの日。
久しぶりのオフが貰えて嬉しかったはずなのになによこの雨は。
何にも出来ないじゃない。
恨みがましく隣の恋人を見る。
視線に気付いたジヒョがむくれて言う。
「私のせいじゃない」
「あんた以外の誰がこんな雨連れてくんのよ!」
「だから知らないって!」
「せっかく植物園デートしようと思ったのに…」
手元には濡れたパンフレット。
「ほんとこの雨女は…」
「私のせいじゃないよ」
「はいはい、分かったわよ雨女さん」
「私のせいじゃ…」
せっかくのデートの計画が台無しになってしまった。すごく楽しみにしていた分本当にショックで不満が漏れる。
だからジヒョの声が震えていることに気付けなかった。
店内の床に雨ではない水滴が落ちた。
その音がいやに大きく聞こえて、ナヨンは顔を上げた。
「私のせいじゃ…ないっ…私だってずっと…ずっと楽しみにしてて…こんな雨っ…」
大きな目から涙がポロポロこぼれていた。
楽しみにしていたのは私だけじゃなかったことを思い出した。二人でこの計画を立てたのだ。
「ごめん、そんな責めるつもりはなかったの」
素直に謝る。
「私もジヒョと同じで悔しくて…ほんとごめん」
「違うの、私も悔しかっただけで。こんなところまで雨女発揮しなくてもって」
涙を溜めながらジヒョは笑った。
「あ〜泣くつもりはなかったのに…。私こんなに楽しみにしてたんだ…」
「私も自分がこんなに楽しみにしてたなんてびっくり」
二人で顔を見合わせて笑う。
「ていうか、ジヒョ泣きすぎ」
「雨です〜」
「笑 嘘だ」
いつものように軽口をたたく。
ああ、これで十分なんだ。ふと気持ちが軽くなった。
「植物園は諦めるとして、カラオケいって、ご飯食べて、でいい?」
「なにそれ笑、いつもと変わんないじゃん」
「それが良いのよ」
ニヤッと笑って言った。
ジヒョは一瞬目をぱちくりさせると、声をあげて笑った。
「そうだね!それが一番!」
ニシシ、と笑いながら私の横にくるジヒョ。自然と手を繋ぐ。
その後、コンビニから仲良く身を寄せ合いながら一つの傘に入って歩いていく二人の姿があった。