本編

□理由
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「ん...」


私は不意に目を覚ました。どうやら眠っていた様だ。


「いてて...」


むくりと起き上がると、首と背中に痛みが走る。
やはり畳なんかで寝ると体が痛くなるから嫌だ。


「って、は?」


〈たたみ...?〉


ボーッとしていた目をカッと開く。周りを見ると、自分は畳で寝ていて、半そで半ズボン。そしてタオルをかけられて寝ていた。


〈私の家には畳なんてないのに〉


もしかして夢でも見ているのかと頬をつねるが、痛みが走る。
目の前には押入れがあり、左にはふすまがあった。そして後ろを振り返ると、窓があったので立ち上がって窓を見た。


ゴウン

ゴウン

ゴウン


「嘘...」


そこには色々な所からあふれる黒い煙と、沢山の工場があった。
私は信じられなかったが、とりあえずふすままで行き、そっとふすまを開けた。


「おお!目が覚めたか、お嬢さん。いや、坊ちゃん」


「ぼ、坊ちゃん?」


ふすまを開けると、そこにはテレビでしか見た事のないレトロテレビや、部屋のいたる所から付けて伸ばしてあるロープに洗濯物が干してあった。そしてその奥には、古いカビだらけのキッチンも見えた。
その中で1人の老人が正座をして私を見ていた。


〈こ、この人って...〉


「マルキド・マルオ...?」


「その通りじゃ!」


目の前にいる老人。それは漫画で見たマルキド・マルオだった。


〈という事はまさか...〉


ここはライチ光クラブの蛍光町なのだろうか。最近見始める様になった、夢小説のトリップだと言うのだろうか。
私は驚いて何も言えずにいると、老人。マルキド・マルオが口を開く。


「よいか!」


「え...」


「お前はこのマルキド・マルオの孫なのだ!」


「は?」


〈孫...?〉


「ゼラ、と言う少年の事を頼むぞ」


マルキド・マルオはそういうとスッと立ち上がった。ゼラを頼むとはどう言う事だ?


「頼んだぞ。坊ちゃん」


そしてそのままドアの方をへ行き、ガチャリとドアを開け出ていってしまった。
私は慌てて追いかけて外へ出たが、もうどこにもマルキド・マルオはいなかった。ここはどうやらアパートの様で、この部屋は2階にあったらしい。
ゼラを頼むってどういう事だ?どうして私がマルキド・マルオの孫なんだ?そしてなんでずっと私の事「坊ちゃん」って読んでたんだ?
私は不審に思い、最近痛くなってきた胸にそっと手を触れる。


「ん?」


触っても痛みはなく、強く揉んでみるが痛みどころか柔らかさもない。


「ひょっとして...」


私は恐る恐る下半身に触れた。すると思った通り、おかしな物が付いていた。


〈これは、まさか...〉


私は急いで部屋に戻り、洗面所を探して鏡を見た。


「ええ〜!?」


思わず大声が出てしまい、慌てて口に手をあてた。
そこには短髪で背が伸びて少し筋肉のある自分が映っていた。

こ、これはまさか性転換!?トリップなんかでよくある性別が変わってしまうあれ!?だからさっき私の事ずっと坊ちゃんって呼んでたの!?


私は額に手を当て、わなわなと洗面所から出る。
そしてさっきまでいた部屋に行くと「ぼくらの光クラブ」で見た。ゼラ達の制服が干してあった。


「...ゴクリッ」
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