本編
□スミレ
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夜。人のいなくなった光クラブでまたもや少女カノンとロボットライチは二人きりでいた。
「ライチ、起きてる?」
「私は眠らない。カノンを見張っているから」
二人で眠っていた台からカノンは起き上がる。
「何かお腹空いちゃって...」
カノンは空腹になっていた。ライチは起き上がってカノンをただ見つめる。
するとカノンは自分達の寝ていた台の下に美しい赤い実のつまった木箱を見つけた。
カノンは一つとり、皮を剥いて小さくて美しい口に入れる。
「おいし〜」
そしてもう一つをとり、同じ様に皮を剥いてライチの口へ持っていく。
「ほら、ライチもどうぞ」
ライチはカノンの細い指を見てから口を開けた。カノンはそっとライチの口へ運ぶ。
「美味しい?」
「私に味覚はない。しかし...」
ライチは自身と同じ名のライチの味を確かめる。
「なぜか美味しいと感じる」
「おーい」
しかしまたもやそんな二人を邪魔するかのように一人の男が入ってきた。
二人は声のした方を見る。男は二人を見て少女のように柔らかい笑みを浮かべた。
「スミレ...」