本編
□妨害
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あれから少し時間がたった。
俺はつぶっていた目を開く。そしてガバッと起き上がってカネダを見た。カネダは隣の布団でくかーっと寝息をたてている。
〈よしっ...〉
俺はそのスキにこっそりと畳から出て、着替えて外へ出た。
「さぶっ...」
外は真っ暗で冷たい風が吹いていた。肌寒さにブルリと震え、両腕を擦る。そして外からドアにガチャリと鍵をかけ、そのままクラブへと向かった。
「ふぅ...」
夜の道を俺は歩く。誰もいない道を少し早足で歩いた。辺りからは昼と変わらずゴウンゴウンと機械の音が聞こえる。でもそれこそがここが蛍光町と言うことを教えてくれるのだと思った。
しばらく歩くと立ち入り禁止の札が見えてきた。クラブの前は沢山のゴミや鉄の山で覆われている。俺は周りの鉄の山の中から一つを掴んで持つ。
〈この位でいいか〉
野球ボール位の大きさの鉄をギュッと掴む。
そしてそれを持ったまま、クラブへと足を踏み入れた。
「...」
中を覗くとライチとカノンはまた二人で台の上に寝転んで寝ていた。俺はベルトコンベアを下りゼラの使うチェスセットの前に立った。
〈やっぱり...〉
そこには首の折れた黒のキングが落ちていた。
俺はその隣に先程拾ってきた鉄くずをほおる。鉄くずはガシャンッと鈍い音をたて転がった。
俺はそれを見てから、来た道を引き返して家に戻った。