本編
□第二の裏切り
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ザッザッザッザッ
俺達はライチ畑からライチの実を取り、鞄に詰めクラブへ向かっていた。チラリと一緒に歩くカネダを見る。カネダはひどく落ち込んでいた。
実はあの日からタミヤとダフがクラブに来なくなってしまったのだ。元々タミヤはゼラに裏切り者ではないかと疑われていたし、ダフもカノンに触れようとしてしまったし、来なくなってもおかしくはない。もしかすると少女三人を逃した事を俺が疑われ、しかもそれを実行に移そうとしたのは自分達なのだという罪悪感に耐えられなくなったのかもしれない。
カネダはいつも暗いが、今はどちらかというと悲しそうに見えた。
〈でもこっちとしては、その方が好都合だな〉
「なぁ、スミレ」
「ん?何?ニコ」
歩いてクラブに向かっているとニコに話し掛けられた。ニコの方を見ると、ニコはこっちを見てなくてうつ向いたまま言う。
「タミヤの奴。来なくなったな」
「そうだな」
「なんで来ねぇんだ?」
「...わからない」
ニコは何とも言えない表情になる。ニコはやはり悩んでいるのだろうか。タミヤの事で。
「カネダ、何かしらないか?タミヤとダフの事」
俺はカネダの方を向いて言った。カネダはビクッと肩を揺らし、また親指の爪を噛む。
「わ、わからないな。タミヤ君もダフも最近あまりしゃべってくれないから」
「そうか」
それからはまた黙ってクラブに向かって歩いた。
そろそろ次の裏切り者が出てくるだろう。いや正確に言うと「罪を着せられる」奴が出てくる。