本編
□裏切り
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ライチはカノンを連れてきた。
そしてその後も、3人の美しい少女達を連れてきたのだ。しかしその3人はカノンとは違い、檻に入れられている。
理由は、カノンより美しくはないからだそうだ。先程タミヤがゼラに質問をした時、ゼラはそう言っていた。
俺は檻に入れられた少女達を少し離れた所から見つめる。
「...」
可哀想そうだな、勝手に連れてこられて勝手に閉じ込められて飢え死にしたらそれで終わりなんて。
俺は今すぐにでも少女達を逃してあげたか
った。しかし俺は首を振る。
焦ってはいけない、慎重に、慎重に進めていくのだ。なんの考えもなしに行動すれば命取りになる。
俺は自分にそう言い聞かせ、皆に囲まれてライゾウに髪を拭かれているカノンの方へ行った。
「なんか信じられないよ...女の子がすぐ近くにいるなんて...」
「うち男子中だしな」
「凄いなさすがゼラだ」
カネダ、ダフ、ヤコブ、デンタクは鼻の下を伸ばす。ライゾウはとても丁寧にカノンの髪を拭いていた。
〈やっぱり、カノン綺麗だな...〉
俺は皆の中に混じってカノンを見る。
でも俺は皆とは別の意味でカノンに見とれていた。
前の世界では嫌というほど女を見てきたが、こんなに綺麗な子は本当に初めて見る。
でも、この子が来た事により、このクラブは崩壊していくのだ。俺は「知っている」。
きっと今頃ジャイボの心は嫉妬で埋め尽くされているだろう。
しかし俺の目はジャイボではなく、後ろでライチの点検をするニコの方を向いていた。
〈きっと、ニコも...〉
ニコは黙々とライチの作業をしていた。皆はカノンに夢中だというのに、その中から外れているのはゼラの命だからだろう。ライゾウ以外はカノンに触れてはいけないと。
彼もとても危険な人物だ。彼はゼラに良いように利用されている。ゼラの為なら命だって捧げるのだろう。
〈だから、まずは〉
俺はニコに近づいてポンと肩に手を置いた。
「なんだよ...スミレ」
「悪いな、大事な話があるんだが2人になれないか?」
ニコは作業をしていた手を止め、振り向いた。俺は外を親指でくいっと指して言う。ニコは俺を不審に思う顔で見つめたが、手を止める。
ゴゴゴゴゴン...
そして俺は、ニコと一緒にベルトコンベアを上がって外まで行った。
そう、今パンの入った鞄を持って三人の子に向かっていくタミヤを確認しながら。