本編
□美の女神
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ゴゴゴン...
あの日から数日後。俺は光クラブに来ていた。そこにはもちろんタミヤの姿も皆の姿もあった。
そして今日。ついにこの光クラブに美の女神が君臨する時が来たのだ。
「あ、あ、あの制服、星華女子中だ!!」
「おっ落ち着けって!」
ライチはいつもの様に、少女を捕獲しに出かけていた。そしていつもの様に戻って来たが、いつもと違うのは俺達と同じ年頃の少女を抱いていたことだった。
〈あれが、カノン〉
皆はそれぞれとても興奮してライチが持っている少女を見つめた。
ライチはカノンを抱いてベルトコンベアを降りてくる。そしてカノンを座らせた。
「マ...マスク取るわよ!」
皆はカノンを囲うようにして立つ。俺もカノンに近づいた。
ライゾウは自身が作ったネコちゃんマスクに手をかけ、ゆっくりと外した。
「おお...」
マスクを取ると、そこには美しい顔が見えた。俺は驚いて声がもれる。美しいとは知っていたが、まさかここまでとは。
長いまつ毛に、薄い唇、艷やかな髪に、白い肌。
〈すっごい美人...〉
「な...なんて綺麗な子なの...こんな子見た事ないわ...まさか...こんな子が...」
スヤスヤと寝息をたてるカノンを皆が黙って見つめていた。
美しい。俺はまるで自分の世界が止まったかのように感じられる。
今の俺にはカノンがどんな花よりもどんな景色よりも美しく見え、目だけではなく意識も思考もすべてが吸い取られるようだった。
〈美しい...少女...〉
「ライチ、なぜこの子を連れてきた?」
「キレイだと思った。とてもキレイだと思った」
ゼラがライチに向かって言う。こう思う様にしたのはデンタクなのだろう。だが、俺達はカノンに夢中になっていた。
「キ、キレイな子だね」
「まさか、ここまでキレイな子を連れてくるなんて」
カネダとダフはジッとカノンを見つめる。
「...すっごい、美人だな」
「良かったわね!スミレ!貴方のタイプ通りで!」
ライゾウはマスクを持ったまま、トントンと肘を俺に当てて言う。でも俺にはその言葉が頭に入って来なかった。
俺の思考は男なのか女なのか、そんな事わからないが、どちらにせよこの子は美しいと思った。
こんなにも何かに見とれた事なんて生まれて初めての事だったから。
〈カノンが...〉