本編

□もう一人のゼラ
5ページ/8ページ



もはや何も考えたくなくて俯いた。

目の前にはスミレが立っていて、まだ何か言っているが僕には聞こえない。

ああ、また僕は捨てられたのか。

お父さんの次は光クラブにも。


「…き」


「…之」


「寛之!」


突然名前を呼ばれた。僕の名前。
僕の事をそう呼ぶ人はこの世界で一人しかいない。
頭には高い女性の声が響き渡る。
散々僕をけなした人。僕が世界で一番なりたくない大人。

ゆっくりと顔を上げるとそこに立っていたのは。


「寛之…」


「お母さん…?」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ