本編

□もう一人のゼラ
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『ゼ…いや、常川君!』


『…どうした?』


驚いた。一人で図書室で本を読んでいると雷蔵達に呼ばれた。着いていくと僕のライチ畑に火が付いていた。

正確に言うと工場とは違う黒い煙が湧いていて、燃えているのだとわかったのだ。しかし全焼はしていない。

一足遅れてライチ畑に到着すると親衛隊は揃っていたが、ヌルとゼックスとアハトの三人がいなかった。他に変わった事と言えば、一番信頼できるアインツの頬に殴られた跡が付いていたくらい。

僕の足は自然とクラブに向かっていた。きっとあいつらはクラブにいると思ったから。
そう思ってたどり着いたが、そこにはタミヤも少女一号もライチもいなかった。そしていつもは僕に従順で意見すらあまりしないあいつが…言ったんだ。


『ゼラはお父さんみたいになるのを恐れているだけだ!お母さんにまた拒絶されるのが怖いだけだ!自分の両親に執着しているだけの弱い子供だ!!』

『このまま30歳まで生き残るなんてゼラには無理だ!それは少女も裏切り者も関係ない!ゼラがずっと両親に怯え続ける限り…ゼラは自分で自分を殺すことになるんだ!!』


何故…君がそれを知っている?
何故…僕の両親の事を知っている?

僕が弱い…?僕が僕を殺す…?

そんな馬鹿な…





……


………


嫌だ…大人になんかなりたくない…でも死にたくない…。

誰か…誰か助けて…!
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