本編
□もう一人のゼラ
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どれくらいの間そうしてただろう。急に静かになったゼラ。
「僕はっ…許されないことをしたっ…」
その言葉に俺はカッとなってゼラから体を離し、ゼラの顔を見た。
「そんな事してない。ゼラはまだやり直せる!」
「だが…!僕はっ…!」
「してない!俺が止めるこれからも…ずっと、一生ゼラのそばにいる!そしてゼラが間違えそうになったら、俺が正してあげる!」
「スミレ…」
「絶対!絶対に一人にしない!ゼラのお父さんみたいに置いていったり、お母みたいに軽蔑したりしない!ゼラは気持ち悪くなんかない!俺が証明してみせる!」
ゼラはポロポロ涙を流した。それは漫画ですら見たことのないゼラの人間らしい姿だった。
それを見て、やっとゼラの心を救えたのだと、グランギニョルを止めることができたのだとわかった。
「ゼラ」
男同士の友情のように熱い、とても熱い包容。
「じいちゃんの預言だ。14歳で死ぬか30歳で世界を手に入れるか。俺は後者を現実にしたい」
「…そうか」
ゼラは一度鼻を啜り、しっかりと俺の肩をつかむ。
「ゼラ、命令を」
「わかっている」
俺はゼラから手を離すとゼラは眼鏡を外してかけ直した。
そして俺を真っ直ぐに見る。
「ヌル、スミレ」
「はい」
「命令だ。僕の命を守り続けろ」
「了解」