あの空の向こうへ

□空の色
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ナマエと出会って半年が経った。

ヤコフに「最近変わったな」と言われるのは、きっとナマエに出会って俺の世界が鮮やかになったからだ。


「…なにか?」
休憩に入りリンクを降りると、ミラの視線を感じた。笑顔でその意図を尋ねる。
「ヴィクトル、最近色っぽくなったよね」
「色っぽく?」
「そう。何かあったの?恋でもしてる?あ、恋はいつもしてるか」
ミラは「常に女がいる男は違うね〜」とユーリに同意を求めた。
「お前は男がいてもいなくてもガサツだけどな」
「ちょっとー!」
女性に困った事がない、というのは事実ではある。もちろん必要だと思う時期が無い事もあるが。
「ねぇ、次はどんな子?」
ミラが興味深々と言った様子で俺を見る。
「次は、だなんて嫌な言い方するね。きっと初めてだよ」
と笑うと、ミラもユーリもぽかんと口を開いた。
自分でもちょっと照れくさい言葉だったなと恥ずかしくなる。
「こんな風に気持ちが動いた事なんて、一度もなかったからさ」
と付け加えると、2人はますます驚いて固まってしまった。
「リビングレジェンドの心をそこまで奪っちゃう女って、どんな人なんだろ」
とミラは眉をひそめた。
(色っぽくなった、か。まだまだプラトニックなんだけどね)
付き合い始めて3ヶ月が経った今も尚、ナマエとはキス以上の進展はない。
ナマエはディナーデートが終わるとあっさり帰ってしまうし、俺もなかなか誘う事が出来ずにいる。
(いい大人が…情けないな)
彼女は他のどの女性とも違う。俺に媚を売ったりしない。いつだって素直で実直だ。
だからこそ、俺は軽率にナマエに手を出して嫌われてしまわないかと怯えているのだろう。
…おかげでいつまでも、子どものような付き合いだ。


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