あの空の向こうへ

□あの空の向こうへ 7
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「ユーラチカ。カナダ大会、メダルおめでとう」
『2位だぞ。なんもおめでたくねーよ』
「うん、ぶすっとしたユーラチカ、テレビで見てたよ」
『・・・』
「ロシア大会で会えるの楽しみだね」
『・・・かつ丼の調子はどうなんだよ』
「え?勇利?うん、よくわかんないけど、バッチリなんじゃないかな」
『お前な、電話してくるならかつ丼情報くらい持っとけよ』
「スパイ扱いしないでよ・・・ユーラチカの方こそ、体調崩してない?ご飯もちゃんと食べてる?」
『心配いらねぇよ』
「ヤコフの元奥さんとこ住み込みだもんね、それなら安心」
『俺の事はいいから、ナマエも風邪ひくなよ。』
「うん」
『お前、他人の事ばっかで自分の事後回しなんだよ。もうちょっと自分を労れ』
「あ、うん」
『かつ丼の世話なんかするんじゃねぇぞ、自分でさせろ。お前世話焼きだからな』
「・・・」
『わがままなヴィクトルの世話だけでいっぱいいっぱいなんだから、キャパ小せぇクセに無理してストレス溜めんじゃねぇぞ』
「・・・」
『なんだよ。聞いてんのか』
「いや・・・なんか、ユーラチカ大人になったなと思って」
『…余計なお世話だよ!』
「へへ。ユーラチカに心配されると嬉しいね。ありがと」
『あ、ああ』
「体調管理と、あとケガにも気を付けてね。じゃ、またね」
離れているせいか、ユーラチカの成長が大きく目に見えて、まるで姉のように嬉しい気持ちになる。
(素直じゃないけど、ほんと優しいんだから)
ふと背後からの視線がある事に気がついて振り向くと、ヴィクトルが微笑みながら立っている。
「ヴィクトル、いつからいたの?」
「浮気電話を始めてすぐ、ね」
「浮気って・・・」
「俺の視線にも気付かないくらい、ユーリとの電話に夢中になって」
「もう・・・」
「ユーリが大人になって君をとられるのが怖いなぁ」
と抱きつくヴィクトルに、
「嘘。いつだって自信満々なくせに」
と笑った。


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