あの空の向こうへ

□あの空の向こうへ 4
2ページ/4ページ



すっかり暗くなってしまった。やばい。
これはやばい。
と言うか買い物袋の中に生ものが無くて良かった。
いやそういう事じゃないけど。しかしやばい。

「心配したよナマエ」
ヴィクトルが腕を組んで門に寄りかかっていた。黒いオーラが見えるのは私だけなのだろうか。
「ただいまヴィクトル。お腹すいた〜」
と勇利は爽やかな汗を振り撒く。
「た、ただいま。あのね、勇利と話し込んじゃって」
「”勇利”?」
ヴィクトルが、私が勇利を呼び捨てにしている事に反応している。この感じ。やばい。
「あ、ナマエ、荷物持つよ」
「”ナマエ”?」
やばいです。
「なんだか、随分仲良くなったみたいだね〜。さ、とりあえずご飯にしよう」
ヴィクトルはこの世の者とは思えぬ邪悪な笑顔を見せ、私の肩を抱いて歩き出す。そして耳元で小さく囁いた。
「ナマエは食事の後速やかに、部屋に戻るんだよ」
「・・・・・」



ぴしゃりと襖が閉まる。
ヴィクトルが相変わらず邪悪に微笑んで現われた。怒っている。
「で、勇利と何を話してたのか。こっちに来て説明してもらおうかな」
ベッドに腰掛けたヴィクトルが自分の膝を示す。そこに座れと言う事らしい。
おずおずとヴィクトルの膝の上に腰掛ける。
「ナマエ。俺がなぜ怒っているかわかるね」
「はい・・・」
「こんな遅くまで、マッカチンが一緒だとは言え、心配したよ」
「はい・・・」
後ろからぎゅうっと抱き締められて、嬉しいやら怖いやら。
「あ、あのね。勇利とは、ヴィクトルをよろしくって話をしてたの・・・」
「俺を?」
「話してた事は、全部ヴィクトルの話だよ」
ヴィクトルは「ふふ」と笑って、肩に顎を乗せる。
「ま、ナマエと仲良くなる事で勇利も日々を過ごしやすくリラックスできば、それもまたスケートに繋がるからね」
「ヴィクトルは無駄な心配してないで、ちゃんと勇利の事だけ考えてあげてればいいの」
「嫉妬しない?」
「・・・しません」
「俺はするけどな。勇利がナマエを好きになっちゃったらどうしようか」
「それって、どっちに嫉妬?」
「バカ」


次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ