あの空の向こうへ

□あの空の向こうへ 3
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結局ヴィクトルの部屋で過ごすという結論で収まり、夕食にかつ丼というものを頂いて、私は自室に戻り荷物の整理をしていた。
ユーリと勇利の勝負で、ユーリが勝ってロシアに帰るとしても一週間後。ヴィクトルを連れ戻せると思ってなかった私は、説得なんて端から考えておらず、持参した荷物は最小限でしかない。
「ただ会いたくて来ただけだしな・・・」
どうせロシアには帰れないとかあっさり言われる事を想定し、引き下がるつもりだったのだ。
「ナマエ〜」
バタバタと酔っぱらったヴィクトルの足音。現れるや否や後ろから抱きすくめられる。
「ナマエの匂い〜」
「・・・飲みすぎだよ」
もう、と笑って、ヴィクトルをベッドに寝かせる。
「ナマエ、寝ないの?」
「荷物の整理してから寝るね」
「そっか」
と言うが早いか、すうすうと寝息を立て始める。
ちらりとのぞけば、とても穏やかな優しい寝顔。

この先どうなるかなんて誰にもわからないのだから、この人に任せてついて行こう。ヴィクトルに出会ってから、私はずっとそうしてきたのだから。
そこに間違いなんてひとつもなかったのだから。


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