あの空の向こうへ

□あの空の向こうへ 2
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ヴィクトルが中にいるらしいスケート場は、報道陣や一般の人達で賑わっていた。
「中に入れるかな・・・」
「行くんだよ」
何の迷いもなく進んでいくユーリ。おどおどとその後ろを歩いていると、その横を駆け抜ける青年がいた。
「あ」
勝生勇利だ。
と次の瞬間、ユーリの蹴りが宙を舞った。というか、勝生勇利が宙を舞った。
「ユーリィィィ!!」
そこまでやるか!と半ば突っ込みのように声をあげて、そのまま一緒に建物の中に入る。
ギャーギャーと騒ぎ立てるユーリを尻目に、飛び蹴りをくらった勝生勇利が大人の対応で穏やかにリンクの扉を開けた。


「・・・・・・!」


踏み込めない。

そこには、氷の上を美しく滑るヴィクトルの姿があった。

そうだ。
私は、ヴィクトルをロシアにつれて帰りたい訳じゃない。私の元に帰って来て欲しいわけでもない。
私は氷上を舞うヴィクトルが好きなのだ。それを糧に輝くヴィクトルを応援しているのだ。それは、彼が心からスケートを愛しているから。
別にロシアにいなくとも、ヨーロッパだってアジアだってどこへだって、彼がスケートを続けるのなら私は全てを懸けて彼について行くのだ。

「ユーリ!来てたのか!」
久し振りに聞くヴィクトルの声が響いた。
「なにやってんだバーカ!ナマエも一緒だぞ!」
「え!」

ぱあっと笑顔になった彼は、扉の陰に隠れている私をきょろきょろと探していた。



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