怠惰の魔王は異世界で青春を謳歌する

□第9話 古代遺跡と彼方の記憶
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翌朝。
結局、何だかよく眠れなかったので目を擦りつつベッドから出る。
シェリアたちを含めて全員既に起きているらしく、誰も残っていなかった。
…窓から外を見ると日がだいぶ高い。完全に寝坊だな、と思いながら部屋から出る。
「あ、グレイ。おはよう」
「おはよう、ウィル…」
あくびを漏らしながら返答…してぱっと横を見る。
どう見ても寝起きのウィルがこちらを見ていた。
「…ウィルも今起きたとこ?」
「うん、まぁ。よく眠れなくて…」
そう言う彼を見ていると、昨日の夜思いっきり抱き着いて泣いたことを思い出し。
ボッと顔が熱くなる。
深呼吸して気持ちを落ち着け、あくびをする彼に「みんな待ってるし早く行こう」と背を向けながら言った。
少し戸惑う気配がしたが、素直についてくるようだ。

「みんな、遅くなってごめん」
そう言いながら広間ーーー専ら食事と課題をやるのに使っているーーーの扉を開く。
「おはようございます、グレイ…あ、ウィリアムさんも」
ミシェルが少しウィルから目を逸らしながら言った。
というかみんな何か態度がおかしいような…
「…ウィル、何かみんなに気ぃ使わすようなことでも言った?」
「え?…あ」
今度がウィルが私から目を逸らした。
「…吐け」
低い声でそう脅す。
しばらく沈黙した後、観念したように話しだす。
「…えーと、昨日の告白のことが筒抜けで…」
「そりゃお前、全員の前で宣言したからな」
「みんな応援してたんですよ?」
「ミシェルはともかくお前は絶対楽しんでただろ」
サブリスを睨みながらそう突っ込むと「バレたか」と両手を上げる。
「確かお前、『考えさせてくれ』って言ったんだろ?」
そこまで漏れてんのかよ、と吐き捨てる。
「言ったよ。で、考えた結果付き合うことになりました、以上、閉廷、解散!」
さっさと白状すると(どうせウィルに吐かせるに決まってる)女子二名が黄色い声を上げた。
「よかったですね、ウィリアムさん!」
「いや、よかったよかった!みんな何だかんだ気を揉んでたんだよ!」
で、で、と二人がこちらに迫ってくる。
「何で付き合うことにしたんですか?」
「どんなとこに惹かれたんだ⁉」
「…そこの辺気にするあたり、トゥリアも年頃の娘なんだねぇ…」
思わず正直な感想を述べるとむっとした顔をされた。
ウィルもウィルでよかったなー、とサブリスに労われている。
てか何だこの公開処刑。唯一のんびりと茶をすするティエリも、その目を興味で輝かせている。
…まぁ14、5の年頃ならこんなもんなのだろうか。
期待に満ちている瞳をこちらに向けるミシェルたちに観念して、私は口を開いた。
「…まぁ、別にウィルの事嫌いとかじゃないし、断る理由なかった(正確にはなくされた、なのか)からね」
「「え〜〜〜」」
期待はずれ、という風に不満な声を上げる二人の後ろから。
「知ってるぞ、それ、確か『ツンデレ』って言うんだろ」
「…あんた一回馬に蹴られて地獄に落ちろ、この悪趣味野郎」
その時私は相当苦々し気な顔をしてたんだろう。
ウィルが噴出しかけていたので一発殴ってやろうかと思案する。
それを感じ取ったのかウィルの顔が引きつった。
「悪趣味って言うなよ、そもそも告白しろって勧めたの、俺だぞ?」
「唆した、の間違いだろ」
「細かいこと気にすんなよ、幸せならいいだろ」
「…それは否定しないけどさぁ」
そう言った途端ミシェルたちがバッと顔を上げる。
「やっぱり…」
「好きなのか⁉」
「ロマンス期待しすぎでねぇの?」
好きとかそういうのとはちょっと違うかもだけど、そう前置きをして。
「…空飛ぶ鳥にも巣は必要、ということさ」
そうにやりと笑うと、ウィルがはじけるような笑顔を見せた。
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