怠惰の魔王は異世界で青春を謳歌する

□第9話 古代遺跡と彼方の記憶
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数日後。
王都に戻って、早速ウィルが見繕ったという家を見に来たのだが。
「…デカくない?これ。まるっきり邸宅だよね」
「ごめん、こんなのしかなくて」
…基本、平民はここから引っ越すこともないので、そういった家が売られることはまずないらしい。
「ていうかさ、それって貴族も同じなんじゃ?」
「それがその…あの、前のあの件関連で…」
「…あー、私を助けてくれた時の?」
曰く。あの後、親玉貴族が違法な薬物(こっちで言うところの麻薬の類だそうだ)を主に傘下の貴族に販売していたことが発覚、多くの家が取り潰されたそうな。
「で、これもそんな取り潰された貴族の邸宅だった、と」
「うん。…嫌だったら、ごめん」
「別に、家には罪はないでしょ」
正直、そんなことはどうでもよろしい。
「それよりさ、これ、アーサー一人じゃどうにもならなくない?」
「ですね、これは予想外でした…」
「…人を探す?」
「にしてもシェリアやレックス、この子たちもあんまり人には知られたくないんだよね…」
はぁ、とため息を吐く。
「まぁその辺はおいおい考えるよ。最悪私の魔法でどうにかできるし」
「…わかった」
そう答えたウィルが後ろに控えた商人を呼ぶ。
提示された値段―――〆て白金貨1枚と金貨24枚―――をきっちり耳をそろえて支払うと目を丸くされた。
ウィルが「予想との差分は払う」と言ってくれたが、流石にそれはない、と断った。
「それじゃ、次会うのは二学期だね」
「うん。…それじゃ、また」
「またね。…あ、みんなにもここの事教えといてよ。いつでも遊びに来ていいからさ」
「…僕も?」
「ったり前でしょ、これだけ広けりゃ客室にも困らなさそうだし」
…なんかウィルの目がキラキラ輝いてる。毎日でも来そうな気配だな…
そんなことを考えながら、その日は別れた。
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