怠惰の魔王は異世界で青春を謳歌する

□第9話 古代遺跡と彼方の記憶
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翌日。
卿とその率いる魔法師団と共に調査に赴く。
のはいいんだが。
「…何でみんなまでついてくるのさ」
「そりゃ、古代遺跡なんてロマンを見過ごせるかよ」
と年相応の感想を述べるサブリス。
「兄さまがご迷惑をおかけしないか見張らないと…」
「なら護衛は必要だろ?」
散々な言い草なミシェルと務めを果たそうと意気込むトゥリア。
「わたくしも古代遺跡には興味がありますので」
しれっと宣うティエリ。
「…グレイの力になりたいから」
最後に、ウィルがそう言った。
「そりゃ彼氏だもんな、うん」
そう笑いを堪えた声でサブリスが言う。
むっとするウィルを制するように、「なら、頼りにさせてもらうよ」と言うと目を瞬いた。
「…何さ、意外だった?」
「いや、だってお前…」
「多分今回は、ウィル活躍すると思うよ?」
因みにシェリアは遺跡を壊しかねないので留守番だ。
というかあいつら、この休みの間基本勝手に遊んでるんだよな。
テレパシースキルの範囲内ではあるけれど。
それはともかく。
「…着いたぞ。あれがその鉱山だ」
卿の号令で魔法師団が動く。
どうやら私たちと突入するのは数名の精鋭のみのようだ。
他は遺跡から何かが出てきたときに対処する役割らしい。
「それじゃ、行こっか。ウィル、索敵よろしくね」
「わかった」
ウィルの索敵魔法の起動を感じながら、鉱山へ潜っていく。

数十分で問題の遺跡についた。
入り口は開いているようだ。
「おおー、すげぇな」
「…うーん、これは」
古代遺跡ってよりか、結構近未来モノに出て来そうな施設だ。
まぁそれだけ古代文明が進んでいたってことなんだろう。
現に。
『侵入者感知。侵入者感知。迎撃システムを起動します』
数万年が経った後でも、システムは生きてるみたいだし。
どっと人型の自動機械(ゴーレムと言うよりかオートマタの方が近い、精錬されたフォルムだ)が押し寄せてくる。
関節の隙間を狙って倒すが、
「…数が多すぎです、索敵範囲内で50!」
「わかっておる!」
卿が吠える。
「撤退だ、手に負えん!」
「―――ウィル、一際大きな魔力の反応はない?」
「えっと、上方にあるけど…」
「…それさ。まだ動いてる?」
遺跡から全員で出てから問う。
何となく嫌な予感がする。
「…止まる気配がないね」
「何となくわかったよ」
破壊した自動機械が消える。
多分、修理されているんだろう。
そして。
「私たち、完全に目の敵にされてるね」
「というか、こんな魔力どこから?」
サブリスの疑問には、
「地脈ですぞ、殿下」
卿が答える。
地脈、と呼ばれる魔力の流れが大地にはあって、それの溜まり場が所々にあるそうだ。
そしてその魔力を吸って魔石が生まれるのだという。
以上、魔石の豆知識。
それはともかく。
「これは、突入してシステムをどうにかしないと止まらなさそうだよ」
「だが、この数では…」
そう苦々し気に言いかけた卿がハッとこちらを見る。
「君が、行くつもりかね⁉」
「…また、一人で行くのか?」
サブリスがそう呟いた。
「いや、どんな顔されたって突入させるわけにはいかんて君たち」
それぞれの表情を見せる友達に苦笑し、遺跡へ目を向ける。
「じゃ、みんなこっちはよろしく」
そしてウィルをひょいっと抱え上げる。
「…え?」
「いや、索敵役は必要なのよねこれが」
ああいうのが相手だと、私のスキルは無力でな―。
そうウィルに言うと彼は納得したようだ。
「んじゃ、索敵と道案内はよろしく」
「任せて」
魔力の流れを逆にたどれば、命令するシステムの中枢に辿り着く。
それは彼も理解していることだった。
「―――行くよ!」
オートマタの群れの隙間を、彼を抱えたまますり抜けるように駆ける。
「気を付けろよ!」
「頑張ってくださいね!」
そんな声を尻目に、再度遺跡に突入した。
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