Children of Chaos Final Fantasy XIII

□第4章 過去と未来
11ページ/14ページ

「ちっちゃい頃からね、夢、見るんだ」
ポツポツと語る少女。
「その夢で私は大人で、お母さんもお父さんもいなくて、セラだけがいて……」
セラというのは、彼女の妹だ。
「知らないけど、どこかで会った仲間がいて、軍隊に追われて……戦ってるんだ」
「それがどう関係するの?」
先を促すと、彼女はさらに俯いた。
「身体が勝手に動いたんだ。頭掴まれて、怖くて、気がついたら、投げてた」
「それで?」
「投げ方、一緒だった。夢の中の私と」
「ふうん……」
「前世の記憶がある、っていう人、いるでしょ?
 私、それなんだと思う」
「またまた。そんなわけ」
ないじゃん、と言いかけてやめる。
彼女は真剣そのものだった。
「怖いんだ。私が、消えちゃう気がして。
 前世の私が、今の私を消しちゃうんじゃないかって」
「……大丈夫。そんときは私が殴ってでも追い出したげる」
「……ありがと」
「どうも」
それで終わりだと思っていた。

中学に入っても、彼女のそれはなくならなかった。
いつまで茶番を、と思うこともあったが、彼女は真剣だった。
作り話とは思えない。かといって、そんなことあり得るのだろうか。
それが本当であることを、私はあの日知った。
夏に海に行った日だ。
「すごい砂浜!エクレール、見てみて!」
「………あ」
「?どうかした?」
「思い、出した」
「へ?」
「思い出した。全部」
「へ???何言ってんの?」
その時、私は、彼女が彼女でなくなるのを見た。
表情が一変したのだ。
「……ちょっと、どゆこと?」
「?何だ?」
口調すら変わっている。
「あんた、誰?」
「?エクレールだが?」
「フザケんじゃないわよ!あんたはエクレールじゃない!」
「………」
「返してよ!私の友達を!返しなさいよ!」
「すまない」
「すまない、じゃないわよ!返しなさいっつってんでしょ!」
「そんなに騒ぐな!」
一喝されて口を噤む。気圧されたのが悔しくて、睨みつける。
「……場所を変えよう」
そして公園にて。
「……どういうことなの?」
「過去を思い出したからといって今の私が消えた訳じゃない。記憶喪失の奴が昔のことを思い出したのと一緒さ」
「……変わっちゃたんだね」
「そうみたいだな。正直、あの口調に戻るのは少し……」
「そういう問題じゃない!」
消されちゃったんだ、と呟く。
あの時の少女の恐れは、現実になった。
「……そう考えるのか」
「だって、貴女は全然違うもん!貴女は、あなたなんか、」
エクレールじゃない!
そう叫んで逃げ出した。
心の中で必死に謝る。
ゴメン、無理だ。私には追い出せない。
ゴメンね、エクレール。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ