novel

□のるかそるか 8
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大野さんとお近づきになる機会を見つける為の手段として、大野さんの行動パターンをリサーチしていたある日のことだった。


大野さんが良く立ち寄る古い本屋があったのだが、夕方から本屋に入った大野さんが、数時間後の閉店まで出て来ない日があった。


その内、そのパターンは週に2日間、火曜日と金曜日に限られている事を突き止めた。


大野さんの生活パターンをリサーチする折、わたしは大野さんに接近しないように心がけている。


大野さんの視界に入らないよう腐心している。


わたしは、わたしという者がこの世にいると認知された上で大野さんと話がしたかった。


その時が来るまで、出来れば存在を知られたくなかったからである。


そのような理由で、火曜、金曜の確定作業も、大野さんが来ない日を選んで行い、その結果として、古本屋の主人である辰吉爺ちゃんとも顔見知りになっていった。


爺ちゃん曰く、大野さんが古い作家の画集を頻繁に観に来たりしてる内に爺ちゃんと親しくなったらしい。


そして、高齢であるが故の身体の辛さなどもあり、夕方早くには店を閉めようとしてる事を爺ちゃんから聞いた大野さんが、画集を観せてもらう代わりに週に2日間の店番を任されているという事も、その後わかった。
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