novel
□のるかそるか 3
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「あ、いえ、そんな…」
我ながら、他に言いようがあるだろうという受け答えをしていたら、背後から声がした。
「大野さん、お疲れ様」
振り向くと、副学長がハンカチで額の汗を拭きながら近づいて来ていた。
「なに?キミ彼と知り合い?」
ハンカチを、ジャケットのポケットに捻じ込みながらわたしに訊ねた。
太り気味なので、季節を問わず汗をかくらしい。
「ご迷惑をお掛けしたので謝っていまし…」
最後までわたしが言うか言わない内に、
「なぁんだ、“特別な”知り合いなのかと思ったよ」
と、軽薄な感じの副学長はニヤニヤと笑う。