novel
□のるかそるか 3
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もう一度聞き返されたら“ほんとうに”がまた増えるのだろうと、うっすらと思った。
「いえいえ」
顔を上げて、そのひとは
「おかげさまで、小笠原先生も筆が進むと思いますよ。ありがとうございました」
と滑らかに言った。
言い慣れていることを口にしている感じだった。
不意に“がっかり”という感情がわたしの胸によぎった。
“仕事上の付き合いですよ”を念押しされた気もしたのだが、
そのひとは
「ぃやぁ、でも疲れたでしょ?」
と、僅かではあるが、プライベートに踏み込んでくれた。