novel

□のるかそるか 16
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薄く目を開けて、野田のことを思い出している。


布団の中にいる。


エリの寝息が聞こえる。





夜中の十二時前に、野田は宿に戻った。


駅までふたりで歩いて行った。


この街でも、もれなく真冬は寒い。


雪が無いぶん、当たりのきつい寒さだと野田が言った。


生憎向かい風も吹いていて、意地の悪い冷たさをわたし達の顔に間断なくぶつけてきた。


わたしと野田は腕を組み、顔を斜め下に傾けて対抗した。


「わるい人じゃないね」


野田がエリをそう評した。


「恐らく、いつも親密な間柄の相手をひとり確保しておかなきゃ収まりがつかない所があるんじゃないのかなぁ。友達でも彼氏でも、或いはその場にいる“誰か”でも…」


と言い、薄く笑った。


思い出し笑いをしているようでもあった。


「エリ、いい匂いするでしょ。しなかった?」


とわたしが訊いたら、野田は首をひねった。


「あんたじゃなくて?……あんたじゃ、ないのか…」


髪にかかった髪の毛を払い、


「言われてみれば女の子って感じの匂いがしたかもしれないねぇ」


と頼りない返事をした。
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