novel
□のるかそるか 15
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「お店に、忘れ物を、していった、お客さんと、ぐうぜん、ちがう場所で、ばったり会ったんじゃなかったの?」
エリが言葉を区切りながら、言った。
最後の方は早口になった。
「おーのさんの方が先に名無し名前っちをいいな、と思ったっぽいニュアンスだったはずなんだけど?」
硬い表情をしていたせいで、エリの顔は平常時より小さく見えた。
「エリ、なんかごめんね…」
と、わたしがはっきりしない口調で言ったら、野田がわたしに向かって控えめに
“そういう事になってるのかい?”
と唇の動きだけだが、ハキハキと確認してくる。
短く頷き返したら、
「なるほど」
と、低く答えた。