novel
□のるかそるか 13
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両耳にかけた髪の毛はすぐにつるりと落ちてくる。
わたしの髪は強情なくらい真っ直ぐで、なかなかいうことを聞いてくれない。
何度も耳にかけ直していたら、
「いやー、思った以上にちゃんとしてるじゃないですか、名無し名字さん」
と野田がちゃぶ台を、手のひら全体で撫でながら言った。
寿司職人が固く絞った布巾でまな板を拭くような身振りである。
「名無し名字は、本当に一人暮らしをしているんだねぇ。白木で統一しちゃったりなんかしてさ」
と顎に手をあて、部屋をぐるりと見回す。
「しかも、人様の面倒までみてるんだから、大したもんだ」
野田は腕組みをして、深く頷く。
エリも首の座らない赤子のように頷く。
名無し名前っちにはお世話になりっぱなしなんですよー、と呟くのを受け、
野田は
「うん、そうみたいだね」
と、エリに視線を向けた。