novel
□のるかそるか 7
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東京での住まいは和室6畳に申し訳程度のDKがついた1DKで、家賃は五万円だ。
3階建てのアパートの一階である。
泥棒が怖かったが、一階は案外狙われないというネット情報を鵜呑みにする事にした。
バイト先も見つけた。
江崎邸の近くにある、アルモという喫茶店だ。
面接に行った帰りに江崎邸の前をブラついてみたが、偶にお弟子さんらしき人達が出入りするだけで、大野さんに遭遇する事は無かった。
いずれにしても、わたしという者を大野さんに覚えてもらわなくっちゃ話が始まらない。
定期的に顔を合わせる“状態”をつくるのが急務である。
毎日がベストだが、週に一度でも良しとしよう。
大野さんの生活パターンと、日常的に立ち寄るところ(お弁当屋さん、コンビニ、本屋さんなど)が分かれば、そこで働けばいいのだ。
そうして“いつもの店の気になるあの子”みたいな感じになれば、願ったりかなったりだ。
もう少しリサーチした後が良かったのかもしれないと、早々にアルモをバイト先を決めたのを少々悔やんだ。