novel
□のるかそるか 1
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「名無し名字、気は確かかい?」
わたしが上京するに至った経緯を打ち明けている間、野田は何度もそう聞いた。
人懐っこい茶色い子犬みたいな丸顔を傾げ、話しの序盤から何度となくそれを繰り返した。
野田ゆかりの家に居た。
野田一家と一緒に夕ご飯を食べてから、テレビをちょこっと観て、二階の野田の部屋に場所を変え、じっくりと話しをしたのだった。
野田とは同じ短大だった。
当時から野田の家にはちょくちょく遊びに行って、ご飯を食べさせてもらったり、泊まったりしていた。
おばさんは料理が抜群に上手い。