書物

□大切な貴方に温かい贈り物を
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今日は朝からお城の雰囲気が浮き足立ち皆があれやこれやと忙しなく城中を駆け回っていた。

私も女中さんと一緒に普段より豪華な宴用にと膳を運ぶ。

十一月二十二日。才蔵さんの実の弟である蛍くんの誕生日。才蔵さんへの用件で里からこちらに向かう筈(はず)と勘助さんに聞いて昨日から皆で準備を始めた。

その姿に才蔵さんは呆れた顔で

「俺は何もしないし参加する気ないから。」

と素っ気なく言い屋敷に篭ってしまった。

(誕生日くらい..いいと思うのに..)

才蔵さんの素っ気なさに少し悲しくも思いながら着々と誕生日の宴の準備が進む。

一段落し廊下を歩いていると甘い香りが目の前を過(よ)ぎる。

??「久しぶりねぇ。優ちゃん元気にしてたかしら?」

愉しそうににっこりと弧(こ)を描く様な微笑みを浮かべている女性。

優「雪さん、お久しぶりです!..才蔵さんなら...」

雪「才蔵に用なんて無いわよ。優ちゃんにお願いがあるの」

いいかしら?と有無を言わさぬ様な笑みを浮かべて顔を覗き込まれて何度も頷く。

雪「ふふ..ありがとう。今日蛍が誕生日でしょ?その事を知らずに来るあの子を驚かせたくて..協力してもらえるかしら?」

優「はい!でも才蔵さんは..」

参加しないと言われた事を思い出し言葉に詰まる。

雪「才蔵の事なら大丈夫よ、手は打ってあるから」

嫌でも来るわ。と才蔵さんによく似た企みを含んだ様に笑っている。

雪「じゃあ、蛍が来たらまた顔を出すわね」

そう言って旋風を残し消えてしまった。

(才蔵さんが来てくれたら蛍くん喜ぶよね)

そう思いながら蛍くんの誕生日の贈り物を部屋に取りに向かった。
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