書物

□月明かり(才蔵さん視点)
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優「才蔵さん...?」

こんなに早く戻るとは思っていなかったのだろう不安気な声で名を呼ぶ。

才蔵「ん。」

もう少し気の利いた言葉が言えれば良いのに言えない。

そんな俺に安心した様に微笑みながら駆け寄ってくる。

優「おかえりなさい..!お怪我は..?」

毎回任務の度に手負いが無いか確認をするのはこの先もお前さんだけ。

才蔵「ただいま。平気。悪かったね遅くなったけど月見する?」

健気に待ち続ける愛しい存在に思わず笑みが零れる。優しく抱き寄せて聞くと同じく微笑みながら頷く。

優「はい。お団子沢山ありますよ」

才蔵「まるで団子の為に帰って来た様な言い方しないでよ。」

確かに団子は楽しみにしてたし他の奴には譲らない。けど早く帰って来た理由が団子だけでは無い。

優「違いましたか?」

小首を傾げて不思議な顔をされると悲しくなる。

才蔵「...さぁね。」

未だに首を傾げている優を他所に縁側に座り団子を頬張ると口の中に甘さと彼女にしか出せない優しい味が広がる。

才蔵「早くしないとお前さんの分も食べるよ。」

揶揄う様に微笑みながら手招くと慌てた顔で隣に座り団子を食べる。

(早く帰った理由は早くこの腕にお前さんを抱きたかったから。団子はその次なんだけどね。)

華奢な身体を抱き寄せると頬を染めて身を任せてくる。その姿が堪らなく愛しくて少し本音が漏れる

才蔵「月見も悪くないね。」

その言葉に顔を上げた優の顎を掬い月明かりに照らされながら口付けをする。

(ねぇお前さん。来年もその次も月見してよ。団子楽しみにしてるから。)

その想いを乗せ何度も月明かりの下で口付けを繰り返すのだった。


~終~
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