書物

□月明かり(姫様視点)
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才蔵さんと恋仲になって初めてのお月見。いつになく気合いを入れて団子作りに専念していた。

昨夜才蔵さんにお月見がしたいと言うと嫌そうな表情をしながらも団子を沢山作る事を条件に了承して貰った。

(三色、みたらし、粒餡...)

味に飽きが来ないように三種の団子を作っていると突然背後から抱き締められた。

優「...っ!!」

突然の事に驚き丸めていた団子が掌から滑り落ちるのをすかさず背後から伸びた手が受け止める。

??「..ちょっと。なに団子落としてるの。」

不機嫌そうな声の主に見つからないように微笑み後ろに顔だけ振り向かせると忍装束に身を包んだ緋色の瞳と視線が絡む。

優「才蔵さん...」

(忍装束を着ているという事は任務...)

悟られない様に無理矢理微笑みを浮かべると才蔵さんは困った様に微笑んだ。

才蔵「そんな顔しないでよ。..任務が入った。月見の約束守れなくて悪いね。」

子供をあやす様に優しく髪を撫でながら眉間に皺を寄せる。

(我儘を言ってはいけない...才蔵さんにとって里からの命は絶対なのだから...)

自分に言い聞かせる様に心の中で呟き才蔵さんに微笑みを向ける。

優「大丈夫です。..お月見ならまた次でも。お帰りを待っています。」

不自然な微笑みだったのか才蔵さんはため息を零し少し考える素振りを見せる。

才蔵「....団子誰にも渡さないで待ってなよ。」

優「..え..?」

才蔵「...。だからその団子誰にも渡さないで俺が帰ってくるのを待ってなよ。..お前さんならこの意味がわかるでしょ。じゃあ行ってくる。」

優しい微笑みを浮かべた才蔵さんは私の頬に口付けを残すとすぐに姿を消した。

優「才蔵さん...お団子今以上に沢山作って待ってます...」

居なくなってしまった才蔵さんにむけて約束をし再び団子作りに励んだ。


~終~
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