書物
□夜道のあの人
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優「はぁ..すっかり暗くなっちゃった...こんなに遅くなる予定じゃなかったから才蔵さんに伝えずに来ちゃった..」
昼間は賑やかだった城下も店の灯りが揺らめき人通りも少ない城への帰り道を私は一人右足を庇いながら歩く。
本来ならば夕餉までには帰れる予定だった私が何故こんな夜道を歩いているのか..これには理由があった。
---朝餉が終わり炊事場で片付けていると松子さんが慌てた様子で炊事場に現れた。
松子「あ、優ちゃん!実は夕餉の材料を切らしちゃって献立は好きな物でいいから..頼める?」
申し訳なさそうに言われた私は献立を決めれる事もあり了承した。
城下に着いたのは昼前だった。夕餉の材料を買い終えた私は帰り道を歩いていたのだ。
しかし急に子供が飛び出してきて私は足を捻ってしまった....。涙ぐみながら謝る子供に大丈夫だと言ったのはいいが痛みが強く帰れずにいた。
どう帰ろうか思案するうちに空が暗くなっていき今に至る...
優「...才蔵さん怒ってるよね...痛いけど早く帰らないと..」
独り言を呟くとドンッと誰かにぶつかってしまい私は頭を下げた。
優「わっ、す、すみません!」
謝る私の頭上から馴染んだそこに居るはずのない気怠げな声が降ってきた。