□興奮促進剤
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久々に友人と休日が重なり、仕事のうっぷんや色恋話を咲かせに贅沢にも飲みにお昼から街へくりだしどんちゃん騒いでしまった。そのまま買い物に明け暮れてきゃいきゃい興奮して買った代物を、しんだように仕事をこなした次の休日にやっと開封して、わたしは今最大に後悔している。


世間一般ではこれは下着なのか
それともランジェリーというやつなのか
「わたし黄色すきだからコレにする」
「え〜じゃあわたしは、」
なんて選んでる時にふと思い浮かんだ改造学ラン。迷いながらも紫を選んでしまったことまで鮮明に覚えている。
酒に飲まれたわけではなく、普段会えない友人と盛り上がってしまった興奮状態が冷めないまま下着専門店へ向かったのがいけなかった。
下着という概念を問いたいくらい意味のないスケスケをわたしはどうして買ってしまったのか。覚えている私は後悔しているなんて言い訳をつぶやきながらも値札を切って、身にまとっている衣類を脱いだ。



『これを着れば、彼氏もイチコロ!』

安直な馬鹿らしいCMの話になったのだ。あまりにも日本人離れしたモデルが爽やかに着こなしていた為、肉付きのいい女が着ればそれは贈答品のハムに違いないとひとしきり笑い、その店が街の通りの奥にあったことを思い出しスキップで向かったあの日。
冷やかし半分、彼氏がほんとにイチコロになるかもなどとお酒が混ざった考えでそのまま購入してしまった、この、下着………


ものすごく似合わない
いや分かりきっていたがとにかく飲んでなくても笑える絵面が完成した。
そもそも素面でなにをしているんだ私は
急激に冷静になった私を見つめる鏡の私。はやく脱げと言われているような気もして早々に肩紐に手をかけようとした



が、耳を疑うような恐ろしい音が玄関から響いた。
あれは来客をしらせる音、インターホン。
わたしの脳みそはいまどうしようでいっぱいである。無理です今は。
宅急便も頼んでないはず、ここは居留守を決め込むしか


「名無しちゃんさ〜〜ん来ちゃいました!」

またもや恐ろしい音、声が聞こえた。
今は平日の朝ですよ仗助くん
居留守を決行した私は寝室から出れるわけもないので、とりあえずここの鍵を閉めた。学校はどうした仗助くん
この醜態を晒すわけにはいかない。私は今の恋人には大人な女性で通っている。相手がかなり年下な為、つい余裕ぶってしまうのだ。
もしこんな混乱状態で、こんな姿を見られてしまえば。きっと笑われてしまうし最悪の展開は引かれてしまう。「あれ、洗濯物見えたからいると思ったのに」足音が聞こえるくらいまで仗助くんが近づいてきた、あ、合鍵渡したばっかりだった…おそらくリビングには朝の食べかけたパンが置いてあるし居ることはバレるはず、着替えるためにも時間かせぎをしなければ。

「仗助くん?どうしたの突然」
「名無しちゃんさん!そっちにいたんスね、いや〜最近会えなかったんでつい。」
「ついって…嬉しいけど学校は?」
「ちゃんと行くっすよ〜その前に一目でも会いたくて」

なんて可愛らしい最高の恋人なのか
この状況でなければ喜んで私も、と抱きしめれるのに。脱いだ衣類も結局下着と変わらないような寝間着なので急いでラフな服を選んでいた、そこへガチャガチャとドアノブが鳴り響く。ああ来てる。
「なんで鍵、閉めてんすか?」
明らかに声色が変わって低い仗助くんの言葉が、わたしを責めているように感じた。会えなかったこともあり、きっと彼はわたしを疑っている。
言葉を濁したり、街へ遊びに行ったりすると必ず彼は拗ねる。それは16という幼さと学生と社会人という年の差の恋愛からくるものだと私も理解しているのでとくに嫌がることもなくちゃんと説明して納得してもらっていたのだが。これは、さすがに

ドアノブの音が止んだ。

「名無しちゃん、ドアから少し離れててほしいっす」
「ちこっとだけ、すんません」

バキ、と音がしてドアノブが落ちた。










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