□レッツシエスタ!
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『至急戻るように』


簡潔な一言をいきなり任務中に送られ、内容を考えるよりも早く仕事を打ち切り、アジトの扉をこれでもかと思い切り叩きつけ自分が戻ったことを告げた。

「ただいま戻りました!何事ですか!?」
「名無しちゃん、急かして悪かった。」

人差し指を口元に押さえたブチャラティが私を待っていた。静かに、ということだろうか。
頷いた私を見てからブチャラティは手招きをして自室へ向かった。
付いて来いと言われているように思えてそのまま付いていけば、リビングでミスタやナランチャがいびきをかきながら寝ていた。豪快に椅子やらテーブルを使って眠っている彼らを飛び越えブチャラティへついていく。自室の扉を開けて私を待っていた彼はさながら執事のように私を迎えた。

「任務の途中だったんだろう?」
「はい、しかし標的が寝てしまって…」

ソファに座れば、テーブルには色とりどりのお菓子と暖かい紅茶がおいてある。
与えらた任務は標的が向かう目的地の把握だった。それももう失敗に終わったが。

「構わないさ、その様子ならさほど重要な目的地でもなさそうだな。」
別の人間を手配しよう、そうブチャラティは言って電話を取り出した。至急戻らねばいけなかったはずなのにここで私は優雅に紅茶を飲んでいいものか。電話が終わった彼にどうしてここへ呼んだのか聞いてみた。

「あぁ、名無しちゃんにも休んでもらいたくてな」
正直言っていることが理解できない私は首を傾げた。しかし彼いわく私は働きすぎだと言うのだ。
そう言われても、しぶる私についに彼はため息をついた。
「名無しちゃん、ここの風習は知ってるか?」
存じません。私は生粋の日本人だし、とくに知ってても知らなくても支障はないように思う。

「昼から夕方にかけてここは静かになるんだよ、あんな風にな。」
扉にむかって放った言葉はおそらくミスタ達のことだろう。つまり、今の時間帯はお昼寝タイムだということか。
その通り、よく出来ましたと言わんばかりに頭を撫でられたが少しバカにされているみたいで不服である。

「名無しちゃん、たまには自分を癒す時間も作ったらどうだ」

確かに思えば昼寝する人が多かったりもう閉店作業にかかる店があったりしたが、風習だったとは。ブチャラティはとても楽しそうに私の隣で笑っているが、なんだか少し怖い。
癒す=寝るというのであれば今は難しい、なぜなら単純に眠くないからだ。丁重に断り任務の続きをしたいのが私の本音である。私はせめて与えられた任務は自分の力で遂行したい、そしてただ彼に褒めてほしいだけなのだ。

「四六時中任務をこなしていれば疲れただろう?」
「いえ、適度に休憩は取ってますので」
「適度に、ねぇ…汗が出てるな、舐めればすぐ分かるぞ」
「いやいやほんとに、あの、ブチャラティ、なぜそんなに怒っているのですか」
「怒ってなどいないさ」

ただ少しイラついてはいるがな、と明らかに怒っている彼の顔は笑顔のままだ。働きすぎなことは実は自分でもわかっている。だが、決して無理はしていないつもりだ。ただどうしても彼をみていると胸の奥に隠した恋が芽吹きそうなのだ。それだけはいけない、役にたつ駒であれば満足だったはずなのに。

すっと頬に手を差し伸べられ、思わず身構えてしまった。「怖いか?」なんて聞かれたが何故、の方が強い。久々に彼を間近で見た気がする。首を傾げているためかサラサラとした黒髪がゆっくりと重力に従い流れている。
「少し、休むんだ。」優しいその声に彼は私を純粋に心配してくれているのだと気付き、同時に淡い恋心は尚更痛んだ。曖昧に答え、とりあえずここから逃げたかった。


それが、いけなかったみたいだ。
「名無しちゃん、寝るのに適したいいネグリジェを頂いてな、着てみるといい」
いきなり肩を掴まれグルリと彼に背中を向けるようにまわった身体、背中からはジッパーが開いた音がした。

「まってくださいブチャラティ!私の上着になんて事してくれたんですか?!」
「なぁに後で戻すさ、あまりにも聞き分けがないのでな、強行突破させてもらう」
「聞き分けがないのは貴方では!?」

いきなりスーツとシャツが半分に裂かれてしまい下着一枚となった上半身を両手で隠した。今度は対面するようにぐるりとまたまわされそのまま押し倒された。なんなのだ一体
「疲れ知らずの名無しちゃんにはシエスタがいらないのだろう?なら一汗俺とかいてみるか」
「正気ですか、どうかお気を確かに」
「汗がとまらないな名無しちゃん。いまどんな気分だ?」

頬を舐められ思わず振るえてしまう、


「俺は今、最高に興奮しているよ」










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