謙信の華

□華族 2
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「景勝……景勝?」

まだ眠い目をこすりながら景勝はマリアを見上げた。
にこりと笑みを浮かべながらそっと額に唇を当て暖かな手が景勝の頬を撫でる

「うん、熱はないわね」

その確認の仕草が終わり離れようとするマリアに景勝はしがみついた
離れたくない…と願う景勝
マリアは景勝の身体を抱き上げると再び眠りにつくまであやし続けた。



謙信「眠ったか?」

「はい……」

布団をかけ直し景勝の前髪を軽く掬うと額に口づけた
その姿に私の胸がちくんっと痛む
あの慈愛に満ちた妻の顔…
いや、私は何を考えているのだ
子供にやきもちなど……

「謙信様……どうしました?」

謙信「いや、何でもない。それより今日は疲れただろう、私達も休もう」

はいと頷くと隣の部屋に布団を敷き始めた
「最近朝は冷えるのでもう一枚かけるものを出しますね」とてきぱきと用意を進める
寝酒を口にしたせいなのか
景勝の額に口づけた姿を見たせいなのか…
考えるより先に身体が動いていた

「あ、謙信様」

謙信「寒いなら一緒に寝れば良い」

マリアの身体を抱き寄せ布団に倒れ込んだ着物の合わせの隙間に手を滑りこませ柔らかな胸に触れると恥ずかしいのだろう頬が桜色に染まる…

幾度も肌を重ねていると言うのに
まだ恥じらう所も愛おしい。

「隣に…あっ…景勝が」

謙信「今は…私だけを見てくれ」

そう言って口づけるとマリアは応えてくれるかの様に私の夜着を脱がす
私の唇や指で高まる身体が花のように開く
そう…淫らに私だけに

謙信「はぁ……マリアっ」

「んっ……ぁあっ謙信様」

鳴呼……いつまでもお前の中に居たいのに
そんな思いも虚しく果ててしまった

謙信「くっ……!」

「謙……信さ……まっ」

果てたあとその豊かな胸に顔を埋める
私の頭を撫でながら耳に触れる指が心地よい全身を彼女に預け息を整えながらその心音を心聞いている時だった隣の部屋の景勝が火が着いたように泣き出した…

景勝「うわぁぁぁぁん!」

謙信「ど、どうすればっ!」

動揺する私に対してマリアは冷静に「謙信様…とりあえず抜いて下さい」とさらっと恥ずかしい事を言いさっと夜着を羽織ると景勝の元へ行ってしまった。

そしてすぐ様、景勝を抱いて部屋に戻ってきたぐずぐずと泣く景勝はマリアの胸にぎゅうぎゅうと顔を押し付けている
ほんの少し前は私の場所だったのに…
そうだ…まだまだ余韻に浸って居たかったぞ

ぼぅっと見つめる景勝と目が合うと「ちちうえ…はだか」とぽつりとこぼした
はっと我に返り夜着を身につけ平静を装った

謙信「か、景勝…一人で眠れないのか?」

景勝「こわい…ゆめみるの」

謙信「そ、そうか…でも上杉の子ならば……」

「謙信様良いではありませんか今夜は一緒に寝ましょう?ね?」

上目遣いでお願いをするマリアに私は弱い何も言えなくなってしまう…
仕方ない惚れた弱みと言うやつだ。

その晩は一つの布団に3人で包まりながら就寝した


翌朝、起きるともうマリアと景勝の姿はなく景持が熱い茶を持って部屋に現れた

謙信「マリアと景勝は?」

景持「朝餉を取られておりますよ、謙信様今日は随分遅いお目覚めですね?昨夜何かありましたか?」

そう言う景持は妖しい笑みを浮かべている
「そう言えば…景勝様が面白い事を言っていましたよ?謙信様が裸やらなんやらと…ふふっ」そう言いながら茶を目の前に置いた。

か〜げ〜も〜ち〜……分かっているなら皆まで聞くな
頼むから。


朝餉を済ませ今日1日の予定を立てる為に机に向かうと廊下をぱたぱた歩く音とマリアの笑い声が聞こえる

「流石月牙族の子ね、足はもう治ってるわ」

景勝「ははうえ…抱っこ」

「あら?甘えん坊さんね景勝は」

満更でもないマリアは常に景勝の要求通りに抱っこしていて、その隣いる兼続は何故か不機嫌そうに「ふんっ」と口をとがらせている。

「次は兼続の番ね?」

兼続「お、俺は良いよ…べ、べつに抱っこなんて子供じゃないんだし」

「景勝とそんな変わらないでしょ?良いから良いから…ほら!」

抱っこされている兼続の顔は赤く恥ずかしいから嫌だょ!と言いつつも大人しく抱かれている…満更でもないようだ。
その気持ち良く分かるぞ兼続
その圧倒的な双丘の質量には私も敵わぬ

なかなか進まない私の筆を見て景持がため息を吐く

景持「謙信様、この仕事が終わったらいくらでも奥様に抱っこされて来て良いですから今は集中して下さいね?」

謙信「な、な、何を言っているんだ。私は別に……」

景持ははぃはぃと鼻でくすりと笑った
全てを見透かされてるようだ…
何故、景持には分かってしまうのだろう
今度機会が合ったら聞いてみよう。

暫くすると遊び疲れたのだろう
マリアの腕の中ですやすやと昼寝を始めた…まだ1日しか経ってないのに本当の母のように景勝はマリアを慕っている

私の決断は間違いでは無かったと
これで良かったのだと思った。

夜になると城下に視察に行っていた景家が戻り景持と共に晩酌をしながら視察の報告を聞く、そこに兼続も参加していた。

景持「おや、兼続どうしました?景勝様と御一緒では?」

兼続「か、景勝は今…奥と風呂に」

景持「一緒に入ってくれば良かったのに」

景持がそう言うと兼続の頬が真っ赤になり「お、女の人と一緒なんて」とわたわたしている。
その様子を見て景家は「まだ子供なんだから平気さ!」と兼続に手ぬぐいを渡し行ってこい!と大きな声を出している。

兼続「じゃ、じゃあ!景家さんが行って来なよ!」

景家「な、なぬ!」

そう言われた景家の顔が一気に赤くなる
それを見た景持は笑いを必死に堪えてる

景持「兼続、景家はダメですよ。謙信様ならともかく……ふふっ」

景家「そ、そうだぞ兼続!俺はダメだ!謙信様なら大丈夫だがな、うん!」

まだ意味の分からない兼続は「じゃあ謙信様行って来て下さい!」と意気揚々に手ぬぐいを謙信に差し出した。

謙信「全くお前達は何を言っているのだ話にならんな…」

景持「おゃおゃ謙信様、私達に遠慮せず行って来ても良いのですよ?視察の話は景家とちゃんとしときますから」

謙信「か、景持っ!」

そんなやり取りをしていると裸の景勝が部屋に飛び込んで来て私の背に身を隠した
どうしたのかと一同が驚く中…
勢いよく襖が開いた

「景勝ー!」

そこには手ぬぐいを上手に腰回りと胸回りに巻いた私の妻の姿……
景家は叫びに近い声を上げ景持はニヤリと笑みを浮かべ尻尾を揺らめかせ
兼続の尻尾は逆立ちぴんっとしている

「謙信様!景勝は?」

謙信「あ、あぁここに…」

私は上杉の総大将。
これしきの事で動揺してはならぬ…

背に隠れた景勝を抱き上げマリアに渡した

「もう景勝、風邪引いちゃうでしょ?め!」

景勝「お水……こわいの〜ちちうえ〜」

目に涙をいっぱい溜めて景勝が私に助けを求めている…父として上杉を統べる者として見過ごす訳にはいかない。

謙信「分かった景勝私も共に行こう、大丈夫だお前に怖い思いはさせぬから安心して湯に入ろう」

景勝「……ぅん」

「じゃあ謙信様も一緒に行きましょ」

謙信「今行く。景家、私の夜着と手ぬぐいを用意して浴場に持ってくるように」

景家「…………はい!謙信様」


檜造りの我が城の風呂は私のお気に入りでもある、妻と子と入るのもまた一興。
景勝を抱きゆっくりと湯に浸かった

謙信「大丈夫か景勝?」

景勝「…はぃ」

うむ…まだ足が付かない故に怖がるのだろ
うしっかり抱いていれば大丈夫なようだ
先に身体を洗い終えたマリアが浴槽に入ってきた。
湯気の中に浮かぶ我が妻の裸体は何時見ても美しい…

「そんなに見られると恥ずかしいわ」

謙信「あ、あぁ…すまない」

景勝「ははうえ……抱っこ」

「おいで景勝」

両手を伸ばす景勝をマリアに渡すと景勝は満足そうにマリアの胸に頬をくっつけ手をあてやわやわと揉んでいる。

「まぁ景勝ったら…甘えん坊さん」

景勝「やわらかいの……すき…ははうえすき」

私もやわらかいのが好きだ景勝
まさかその双丘をお前と共有するなど夢にも思わなかった…寂しいのやら悔しいのやら訳の分からぬ感情が渦巻く。

「ちゃんと温まったから上がりますね謙信様」

謙信「あぁ…」

鳴呼……一人で浸かる浴槽はなんと広いのだろう虚しく月を見上げる
今なら神牙一悲しい和歌が作れそうだな

「謙信様」

謙信「マリア!?」

彼女の手には酒に杯…
傍にくると「さぁどうぞ」と注いでくれた

謙信「うん、旨いな…」

その後は背も流してくれて髪も丁寧に洗い上げてくれたりといたせりつくせりだった
最後に二人で湯に浸かっていると「どうぞ」と両手を広げその胸に私の頭を抱く

「寂しい思いさせてごめんなさいね」

謙信「大丈夫だ、お前が居てくれる私は神牙一の幸せ者だ…」

柔らかな胸に頬をすり寄せながら我が妻を心の底から愛おしく思っていた。




景家「ところで景持は本当に謙信様の事が良く分かるな色々と」

景持「ふふっあんなに丸分かりにるお方は謙信様ぐらいでしょう」

そう景持は見透かしているのでは無かった謙信の耳と尻尾の動きで全ての感情があらわになっていた事を…謙信がその事実を知るのはまだまだ先の事となる。


続く



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