ONE OK ROCKな日々
□結婚生活〜Toru ver.〜
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「あ〜っ!疲れた!」
「だね〜。でも、奥さまズ楽しかったなぁ」
「奥さまズ?」
「うん!」
「はは。そっか、良かったな」
「………………」
「ん?」
「ううん。お風呂入れてくるね」
「ん」
「……やっぱり!」
「?」
「Toruと話したい!」
「どうしたん」
「Toru最近良く聞いてる曲とかバンドとかある?」
「急やな。どうしたん(笑)
ん〜…………そうだなぁ…なんやろ、○○かなぁ。」
「へぇ〜、私も今度聞いてみようかな。そういえばさ、Toru昔オムライスめっちゃ好きだったよね。今でも好き?」
「うん、好き」
「え……」
今、すっごい自然に「好き」って…。
「そっ、そっか!じゃあ今度作るね!」
「頼むわ」
ギュ
あ、手……。
手は自然に握ってくれるんだよね。
「Toru」
「ん?」
「何かさ、Toruの好きなものの話してよ」
「え?」
「ん〜、なんかね、最近Toruのことちゃんと知れてるか不安になることが多くて……」
「なんだそれ(笑)好きなものかぁ………ん〜。あ、ONE OK ROCKが好き」
また好きって……………。
「っだね。そりゃそーだ」
Toruは、ONE OK ROCKについて楽しそうに話してくれた。
「でな、」
「Toru!」
「ん?」
「私のことは?」
自分から話をふっておいて、Toruの言葉を遮って聞く。
「……………。」
黙るToru。
食べ物もメンバーのこともすぐ好きって言葉が出てきたのに、私には出せないんだね。
「ねぇ、Toru。Toruはちゃんと私のこと好きでいてくれてるの?私は付き合う前も付き合ってからも、結婚した今もずっと、ずーっとToruのこと大好きだよ?気持ちもちゃんと伝えてるし……………。どうして。どうしてToruは「好き」も「愛してる」も言ってくれないの?」
溢れだした思いは止まらなかった。
涙と一緒になって次から次へと。
「ねぇ…………ねぇ、なんか言ってよ……………」
「…………………。」
沈黙に私の嗚咽が響く。
ずっと我慢はしてきた。Toruの、そしてONE OK ROCKの夢を誰よりも応援したいから、半年にも及ぶ海外ツアーへも何度も送り出してきた。Toruのいない半年は寂しくて、会いたくて、でも会えなくて。
私を気遣ってかけてきてくれる電話で、そんな寂しさが口から出てしまわないように必死に押し殺した。
久しぶりのオフにゆっくり二人で過ごそうと思っていたのに、仕事が入ったり、芸能界の友達から電話が入ると、申し訳なさそうに家を出ていくToruを何度も笑顔で見送った。
全部全部、Toruのことが大好きだから。
「Toru」
愛しい人の名前を呼ぶ。
すると、ずっと黙っていたToruが、ソファから下り、私の目の前で床に直接腰を下ろしてそっと私の手を握った。
「麗」
目を見て、優しく私の名前を呼ぶToru。
「ん」
「……ごめんな。俺、なんか照れくさくて」
「………。」
「何度も言おうとした、最初の頃は。」
「最初の頃って?付き合ってた時?」
「まぁ、その時も。結婚してからも、ツアー行って、あっちから電話かけて、声に元気ないのに気づいた時とか、何度も言おうとしたんだ。でも、ただひたすら恥ずかしかった。そうしてるうちに、言えないなら一緒にいれる時はとことん一緒にいようって思うようになってな」
「……………それで、手を?」
「ん。麗がソファでテレビ見てれば、必ず隣に座って手を握る。肩を抱く。言葉にできない俺なりにいろいろしてきたつもりだった。なのに……なのに、ごめん。泣かせて」
「Toru…………」
手を握ったまま、ずっと下を向いて話すToruの頬を握られた手をほどいて両手で優しく包み込む。
わかっていた。
Toruが口下手なこと。誰よりも優しいこと。なのに、気持ちを積極的に言うように強制しようとして…………。
「何やってんだろ、私」
「えっ」
私はソファから降りて、Toruを力いっぱい抱き締めた。
「麗………」
「Toru…Toru…」
これでいい。私たちには、言葉がなくたって、気持ちが通じてるって確信がある。
大丈夫。
チュッ
私は自分からToruに軽いキスをした。
「Toru。もう大丈夫。わかってるの、Toruが口下手で誰よりも優しくて、私のことをちゃんと愛してくれてるってこと。ずっと見てきたもの。それなのに、無理させようとしてごめんね。もう大丈夫だから!」
そう言って、私が立ち上がろうとすると、Toruに腕を強く引かれて、またToruと抱き合う形になった。
「と、Toru…………??」
「…………………愛してる」
「えっ!」
「愛してるよ、麗」
止まっていた涙が再び流れ出した。
「ふっ。言わなくても言っても泣かせるやん(笑)。これからは、そんなに頻繁には言えないかもしれないけど、言うよ」
「無理、しなくていーのに」
「無理やない!だから、ずっとこれから先もずっと、俺のものでいてくれ」
「……………もちろん!」
私たちは、いつまでも笑いあった。
幸せな瞬間だった。