ONE OK ROCKな日々

□呼び出し〜Taka ver.〜
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"今すぐ会いたい。会いに来いよ"

その言葉に突き動かされて、アメリカまで平気で来ちゃうあたり、本当に貴寛のことが好きなんだと実感。

「で、とりま空港までは来れたものの……」

貴寛が迎えに来る時間まで、あと一時間ちょっと。
英語は、基礎の基礎の日常会話くらいしか理解できないし、話せないレベル。なのに、こんな完全アウェーな場所に1時間もいないといけない現実に、とりあえず隅に行って座ってようと思いたち、隅にあるソファーに座って30分、今にいたる。

ピコン…
LINEの通知を知らせる音。

"今出た。あと30分頑張れ"

"うん。気を付けて来てね"

あと30分………

「はぁ」

見知らぬ土地、ほぼ理解できない英語。

ため息をつかずにはいられない状況に、私は貴寛がこれまでたどってきた道を思わずにはいられなかった。

貴寛は、今や日本国内のみならず、世界各地で人気のONE OK ROCKのボーカル。それも、若者だけじゃなく、30代〜50代、男性〜女性まで幅広くたくさんのファンを抱えている。そんなONE OK ROCKも、海外に初めて出て行くっていうタイミングがあった。
前に、貴寛にその時の話を聞いたことがあったんだけど、貴寛は前から少しずつ英語の勉強はしてたみたいだけど、やっぱりどんなに勉強してても現地に行ってみないと、どのくらい自分の英語が通用するのかとか、どれだけ話せるレベルにいるのかとか、全くわからなくて最初はすっごい不安だったらしい。
しかも、アメリカに向かうまでも相当大変だったんだって。ギターの享さんが、飛行機が大の苦手だってことが判明して、それは今も変わらないらしいんだけど、飛行機に乗るまでとか、機内とか、相当大変だったらしい(笑)

その他にも文化面とかね、たくさんの苦労をして、そういう経験をアメリカに進出した後、イギリスとかフランスとかカナダとか、いろんな場所にいくたびにして、ファンを獲得して、大きなバンドになっていったんだって。
懐かしそうに回想する貴寛の横顔は、とても清々しいっていうか、まだまだ未来に向けて夢を追う少年のようなそんな顔だったことを覚えてる。

早く会いたいなぁ。

「Hello」

「えっ」

そんなことを考えながらボーッとしていると、見知らぬ外国人男性2、3人が話しかけてきた。

「あっ、えと、Hello」

とりあえず挨拶を返すと、それを皮切りに男性たちはどんどん私のわからない単語がふんだんにちりばめられた英語で私に話始めた。

「あ、あの〜……」

日本語なんかが通じるわけもなく、どうしていいのか、あたふたする私の腕を笑顔でつかみ、どこかに連れて行こうとしだした時、得体のしれない大きな恐怖が私を包んだ。

「い、いやだっ。No!I can't understand what you say!Don't touch me!」

怖い

怖い

怖い

「たかっ??」

バッ

「っ!」

懐かしい匂いが私を包んだ。

「たか………」

貴寛は、これも私がわからない英語で、外人たちを凄んでいるようだった。私はただ、ひたすら貴寛の胸にしがみついて、ことが済むのを待った。

「……。」

「はぁ…。大丈夫か?」

そう優しく聞きながら私の顔を覗き込むその顔は、まぎれもなく私が3ヶ月間ずっと会いたくてたまらなかった愛しい人だった。

「貴寛」

3ヶ月ぶりの愛しい人との対面

見つめ合う2人

徐々に唇が近づき−ー……………

「ったく、何やってんだよ」

「へっ」

「どうせボケッとしてたんだろ。あのなぁ、ここは日本じゃねーんだぞ?まして、お前ほぼ英語わかんねぇんだから、ボケッとしてっとああやって良くねぇ野郎寄せ付けんだよ」

「……。」

「ちょっとは頭使えよ。日常会話くらいは俺にさんざん教えられてんだから、どっかカフェに入るとかさ。ったく」

3ヶ月ぶりの再会なんですけど。私、あなたに言われてやっとの思いで来たんですけど。私がどんな思いで1時間ここで1人で待ったと思って………。

「おい、聞いてんのか」

「……ごめん。」

「はぁ。行くぞ」

「うん」

納得いかない。呼んどいて、待たせておいて。何、その俺様な態度は。
貴寛は、ちょっとそういう俺様気質っていうか、自己中なところがある。

それでも……………

「ほら」

差し出された右手

「変なやつに連れてかれたら困る」

いつも大きな愛と優しさで接してくれるから、私はどんどん貴寛に夢中になる。

そして、ようやくONE OK ROCKがアメリカツアーを回るバスに合流した。

「あれ?みんなは?」

「買い物に行ってる」

「そっか」

「………」

「なんだよ」

「こういう環境でツアー回ってるんだね。辛くなる時ない?」

「もちろんあるよ。まぁ、だいぶ慣れたからあまり思わなくなったけどね」

「そっか。」

「ん。」

貴寛は、ソファーに腰を下ろし隣を示した。

「あ、でも、もうすぐみんな帰って来るかも」

「いーから」

あたふたする私の手を引っ張り、強引に私をソファーに座らせると、肩に腕を回した。
そして、私に軽くキスをした。

「……」

「…………。」

「な、なんか恥ずかしい」

「何でだよ。こっち来るまではさんざんしてたじゃん」

そう言って、イタズラな笑みを浮かべると、再び貴寛の唇が近づいてきて、

チュッ

また軽いキスをした後、貴寛は面白がっておそらく真っ赤になっているであろう私の顔をじっと見つめ、今度は少し深いキスをし出した。

「ん……」

会えなかった3ヶ月間、ずっと触れたかった貴寛の体、髪、顔。
触れられることを望んでいた私の体。
貴寛をひたすら求めていた私の心。

全てがキスで満たされていくような、そんな優しい時間だった。

「したい」

けど、そんな時間は貴寛の一言によって我に返らされた。

「はっ!?」

「無理。そんな声聞いたら3ヶ月も我慢してきたんだから、もう無理。今すぐしたい」

貴寛は、私が制するのを聞かずに自分の服を脱ぎ、私の服も脱がせようとボタンに手をかけ始めた。

「貴寛ってば!ねぇ!……………貴寛やめて!」

「………………。」

動きを止める貴寛。

「あ、ごめん。違うの!別にいやっていうわけじゃなくて」

「わかってる。そうだよな、わりぃ」

「ごめん……。」

「いーよ、明日できるし」

「え」

「麗どのくらいこっちにいれるとか言わねーから、ホテル予約できてねーんだよ。だから、明日一緒に泊まれるとこ探しに行くぞ」

「あ、うん。え、じゃあ今日私は」

ガチャ

「おぉ〜!麗ちゃん!良かった!ちゃんと着けたんだね!」

バスのドアを開けて中に入ってきたのは、亮太さんと智也さんだった。

「あ、お久しぶりです。」

「久しぶり久しぶり!元気してた?」

「はい」

「あれ、享は?」

「ん?
一緒に来てるつもりでいたんだけどな。またいつものぶらっとじゃない?」

「そっか」

「てか、森ちゃんなんで上裸?あぁ!もしかしてそういうこと」

「バカちげぇーよ。変な想像すんな」

「はは。そっかそっか?」

亮太さん、相変わらず豪快だ(笑)。

「良く来たね」

智也さんは、本当に根っからの優しさがにじみ出てる。

「はい」

「今日さ、コイツここに泊めたいんだけど、ダメか?」

「え!ここに!?」

「なんだよ、嫌なのかよ」

「いやじゃないよ!でも………迷惑、ですよね?」

「別にええんとちゃう?だって、ホテル取ってへんのやろ?」

「まぁな」

「俺らは別にええで?」

「すいません。ありがとうございます」

「享、なんて言うかな」

「森ちゃんの彼女に悪くは言われへんやろ〜。大丈夫やて」

ガチャ

「ただいま」

「あ、来た来た」

「ん?おう、来たんやな」

「お邪魔してます」

「享〜。なんや、ここに泊まりたいんやて。別にええよな?」

「あ?おう」

「ありがとうございます!」

「でも、どこに寝るん?」

「あ………。」

「あっちの部屋で寝ようぜ」

「ちょ、貴寛」

「ん?」

「亮太さんも智也さんも奥さんに会いたくても会えないで悶々としてるのに、私が貴寛と一緒に寝るのはマズイと……」

「あぁ。…………じゃあ、俺1人であっちのソファーで寝るから、お前俺のベッド使えよ」

「え!それは申し訳ないよ!」
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