短編

□夕やけこやけ
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夕やけこやけで 日が暮れて
山のお寺の 鐘がなる
お手々つないで みなかえろ
からすといっしょに かえりましょ

仕事帰り、時計台の下を私とフェイタンとでブラブラ歩く。

「何か。」
歩きながらそう歌う私に、彼は聞いた。

しかし、それは不思議だからとか興味を持ったからというような意味は込められていない。

多分「その歌をやめろ」という意味だ。
彼の含まれた意味に気付きながらも、
私はそれを無視して答える。

「私の国で夕方になると、
必ずこれがどっかから流れてたんだよ。
からすといっしょにかえりましょって。
それで子供はみんな家に帰るんだよ。」

「くだらないね。」

「はは、ホント。」

自国での記憶はあまりない。
ただ今日みたいな血のように赤い空を見ると、
不意に小さな頃の朧げな情景が蘇るのだ。

自分の思い出は、
甘くも暖かくも美しくもない。

もしそうでなかったら、
国を飛び出し、A級賞金首のレッテルを貼られた盗賊団の一味になんかになってやしない。

彼も、彼と私の仲間も、
きっとみんなそうなのだろう。

だから居心地がいいのだし、
こうして私は笑っていられる。

彼の横顔をチラと見て、
私と同じなんだと思うとどうしてか笑顔を溢さずにはいられない。

その時ゴーンと時計台の鐘がなった。

「あ、お寺の鐘だ。」

ゴーンゴーンと響いていく鐘の音。
私はそれを聞いて、急に心細くなってしまう。

早くお家に帰らなきゃ。
早くお家に帰らなきゃ。
なんて。

「寺じゃないね。」

と言いながら、彼は私に手を出した。

「何。」

「手、つないで帰るんだろう?」

そう言った彼の言葉の意味は多分。

「あはは、そうだね。」

彼の手は、冷たいけどあったかかった。
 

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