短編

□人間嫌いは治らないけど。
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人間は生臭い。

と思うのは何もひしゃげた内臓や、飛び散った返り血の臭いから受けた感想だけではない。

生きているうちから滲み出ているその人間の雑多な感情、執着。

ああ、全てが厭わしい。


「どーでもいいわ。」

目の前の夥しい肉塊の前にしゃがみ、ハイライトを口に咥える。

アラシは幻影旅団の一員だ。

今日も仕事で沢山の人間を殺した。

しかし、「殺し」なんて概念はおそらく自分には無い。ただ「作業」をしているだけだ。

あの断末魔、生きていても何も良いことなんかないのに、人は死ぬ時、極限まで足掻こうとする。

私は‥‥ないかな。
出来るなら早々に死んでしまいたいと思う。

いや、違うな。元からここにいてもいないのと同じなのだ。


「終わったか。」

「‥おう。フィンか。」

フィンクス。同じく幻影旅団の一員だ。
彼も自分の任された所が終わり、こちらに駆けつけたのだろう。

同様に腰掛け、セブンスターを吸っている。

フィンクスが吐き出す煙は、ニコチンが濃いせいか灰色よりもむしろそれは紫に近い色で夜の空に消えていく。

フィンクスはタバコがよく似合うよなと思う。


「お前って、イヤに辛気臭ぇ顔してるよな。」

どこを見ているかわからないがただこちらは見ず、真っ直ぐ前を向きながらフィンクスは言う。

「‥そうか?」

「あぁ、いつも殺しやるたび、世界のおわりみたいな顔してんぜ。」

「‥。」

いつもそうだ。フィンクスは馬鹿みたいな顔して私から色んな事を盗み見ていく。


「‥馬鹿な顔して。」
小さく呟いたから、それにはフィンクスは聞こえなかったらしく。

「ま、そんなに眉間にシワよせてるとよ、
ほら、フェイみたくなっちまうぜ?」

やけに明るい声で私の方をやっと向く。
頭なんてポンポンしちゃって。

不意になんだか泣きそうになってしまう。

「うるさい。」

これだってワザとなのだ。
知ってる。
ワザと明るく振舞って。気づいてないフリをして。

でも、私にはそれが何回も「大丈夫だ」
って聞こえる。


何が大丈夫なのか、自分でもよくわからないけど、きっと大丈夫なのだ。



「飯、行こうぜ。」


ほらまただ。
きっと私の好きなものでもガツンとおごる気なのだろう。

馬鹿だなぁ。

フィンクスだってやっぱ生臭いや。

風が吹いて、私の服からも同じ臭いがすることに気づく。


「やっぱり私も生臭い。」


でも君と同じにおいなら。



「‥なぁーに笑ってんだよ。」

大きな腕を首に回される。














人間嫌いは治らないけど。

君がいるなら大丈夫。





(何食う?)
(ホルモン。)
(‥まじかよ。)

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