短編

□アイアンクローで待ち合わせ
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「まだ来ねーのかな。」

今私たちは、繁華街のど真ん中にいる。
仕事の待ち合わせだ。

「なにやってんだろうね。」

待ち合わせ時間からもう15分は過ぎているはずだ。

立っているのが辛くなってきて、その場にしゃがむ。

今日は日曜日か、こういう仕事をしてると曜日感覚狂うな‥。

周りはカップルばっかりだ。

うわ、あの人すごい綺麗な脚
わーあの人の服どこで買うんだろ

一しきり人間観察したところで
なんとなく彼を見上げてみる。
キリッとした、よく見ると割と大きな目、明るい髪をオールバックにして服装はジャージ姿。
無い眉を寄せながら「まだかよあいつら」と悪態をついてタバコを吸っている。

控えめに言ったって、
「ヤンキーみたい。」

「あ?」
と私を見下ろす。

「あは、怒った。」

「うっせ。」

会話終了。とっても暇だ。

「ねー。まだかな。」

「知らねぇよ。フェイに携帯かけても通じないしよ。」

そのとき、香水の匂いがして女の人達が私たちを通り抜ける。

すごいお尻とお胸‥‥。
あきらか素人ではない。

女の人達は、猥雑な路地の中に入って行った。

チラリとフィンクスを見ると、
やっぱり目線が女の人のお尻に行ってる。

「おにーさーんどの子が気になりますかぃー」
と後ろから声をかけてみる。

「おお‥真ん中のお嬢系‥てお前な!」

「いや、だってばっちし見てたっしょ。」

お兄さんもすみに置けませんなぁ
とおちゃらけて言う。

「私の目は誤魔化せませんぞ?」
そう言って顔を覗くと、軽くアイアンクローをかまされる。

おかげで
「もぶっ!」と変な声が出てしまった。

「俺はお前で十分だよ。」

そう言って、私の顔にさらに指をのめり込ませる。

「痛っ!痛いよ!」

指の隙間から見えた奴の顔は、
とてつもなく赤かった。

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